代表取締役 湯川 剛

中小企業経営者の神経の90%は資金繰りで使い果たし、日々の行動の90%は売上構築の為に走っていると自分なりに思っています。
そのような意味からしても1992年もいろいろな出来事があり、特にバブル崩壊後の資産査定は厳しく、融資枠の縮小により更なる資金繰りに追われる有様で、資金繰りが行き詰まった私の知人も含め、多くの中小企業が次々と倒産していった1年でありました。
その殆どがバブル時に本業とは無関係な株や不動産などに投資をした結果でしたが、私はバブル期に不動産は一切購入しなかったのが幸いしました。
そんな中、何とか余裕ある資金繰りをしたいと常々思っていた私は、以前住んでいた自宅の隣人の話を思い出しました。
「湯川さん、あなたの土地を売る場合には必ず声をかけて下さい」
自宅周辺は造園業を営む方々が多く住む地域で、例の2日間かけて自らブルドーザーで家を破壊したあの土地です。(第75回掲載)
「そうだ、あの隣接した3軒の方々にお願いしよう」
社員さんに冬のボーナスを渡した翌日の12月26日に訪ねて行きました。

「資金繰りで困っているので買って欲しい」ととても言えなかった私は、
「この土地を売却して新しく工場を建てたいと思っている」などと言ったところ、
「この時代に凄いね」と言った後、こう続けられました。
「儲けているのなら安くしてね。安くしてくれるなら買っても良いよ」
バブル崩壊後で土地の価格が下落している事は承知していましたが、それにしても私の思っている価格の1/10で提示されたのには驚きました。
もう一方の方は「それは有り難い。地続きになっていれば、樹木の管理もし易い。」と言われ、やっと決まりかなと思っていましたが、相手から「こんな世の中だからウチの方も資金繰りが厳しいので、土地の差し替えをしましょう」と言われ、がっかりしました。
心の中では土下座してでも「実は資金繰りが苦しいので、何とか買って下さい」と言いたかったのですが、多少の面子もあり「ご縁があればお願いします。」「返事は1月14日にします」と言われて帰ってきました。

残り5日で新しい年を迎え、この調子じゃ、来年も資金繰りとは縁が切れない状況が続くのだなとクリスマスも終えた師走の町に思いました。そういう意味でも、株式公開は何としてでも実現しなければならない大きな課題となってきました。

(次回に続く)

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