代表取締役 湯川 剛

CM撮影中に知った業界最大手のオムコ社の倒産。
直接の取引先でもなかったOSGに、突然「オムコ倒産後の事業を引き受けて欲しい」という話が舞い込んで来ました。
当時の私は、相変わらずセミナーで全国を走り、加えて新製品の発表会等で正直なところ、それどころではないという状況でした。
同時に猪木さんから新日本プロレスの経営改革を見て欲しいとの依頼もあり、フル回転でした。
そんな日々を過ごしていたのでオムコ事業を引受ける事に対し、積極的に介入する余裕もなく時間が流れ、引受け話もピタリと止まったまま、気づけば2ヶ月が過ぎようとしていました。

ところが12月に入った頃に、オムコ社引受けの話が再浮上しました。
聞くところによると、引受けの名乗りを上げていた大手総合家電メーカー系のS社が、土壇場になって話を前に進めることができなくなったとの事です。それはS社が医療認可工場の承認を持っていない事が原因だとの事で、既にニチデン(現・OSGウォーターテック)という医療認可工場を所有するOSGに、話が改めて廻ってきた訳です。さすがに、あのニチデンの買収がこんな時に影響を与えるとは思っても見ませんでした。
CM発表会が終了し、新日本プロレスの経営改革に重要な経営陣の刷新もほぼ目処がついたところで、改めてオムコ事業について真剣に考えました。

このオムコ事業引受けに対し、私には2つの課題がありました。
1つは、業界に対する影響です。再建の目処が立たなければ、企業は消滅します。
最大手のオムコ社が再建出来ないまま消滅すれば、アルカリイオン整水器のイメージが低下し、業界全体としての信用を失い、悪影響を及ぼす。これは同業者として由々しき事態です。
新CM制作をして今まで「浄水器のOSGから浄水器プラスアルカリイオン整水器のOSG」として、OSGの自社製品を積極的に販売していこうとしていた矢先です。
別の見方からすれば、ライバル会社が1社消えるのでいいではないか。と判断する人もいるかもしれませんが、それは一部分の認識です。
オムコ社が業界の中小メーカーならば、大した問題ではありません。最大手だけにその影響は業界全体のイメージにつながり、代理店も混乱し値崩れやメンテナンスの不備等も発生し、ともすれば浄水器メーカーにも悪影響を及ぼすのではないかと懸念しました。
すなわち「器具を通して美味しい水を飲む。または体に良い水を飲む。」メーカーはきちっとメンテナンスをしてこそ、その価値が持続されるのです。
ところが倒産してメンテナンスが出来なくなれば、消費者が我々の商品を購入される時に「メンテナンスは大丈夫だろうか」と思われる事が最大の問題だと思いました。
ライバルが1社消える事など問題外です。

更にもう1つの課題が私を大いに悩ませました。
それは負債60億円の倒産企業を引き受けていいものか。
2001年には上場しようと計画している時に、それは大きな障害になるのではないか。
OSGの年間売上以上の負債は、元より論外であったかもしれません。

しかし悩むという事は、そこには何かに挑戦してみたいという思いがあった事も事実であり、 「彼らとまずは会ってみよう」と思いたったのは、12月半ばの事でした。 いずれにせよ、年も押し迫った1999年12月半ばから大晦日にかけてのこの15日間は、私にとって忘れられない日々となりました。
「彼らとまずは会ってみよう」
その後に経験する長いどんでん返しの日々を、この時は想像も出来ませんでした。

(次回に続く)

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