代表取締役 湯川 剛

「脱アクアC」する事を決心。するとまた新たな問題が浮上しました。
それは、アクアCブランド保護として引取った倒産したアクアCジャパンの在庫です。
当時、アクアCブランドを傷つけない為にもアクアCジャパンの在庫を引取るべきだと馬場社長に強く訴えた事がありました。しかし「ミカンガスは引取らない方針だ」という彼らの姿勢は変わる事なく、アクアCブランド保護の必要性を訴えたOSGが引取る事を決断したのです。
水宅配用ガロンボトルの充填機、中にはペットボトルの充填機やコンベアもありました。特に私が問題視した在庫は、アクアCブランドのサーバーです。不具合品も含めサーバーを放置した場合、ディカウントショップ等に流れる事も想定され、何としてもアクアCブランドを保護しなければならないと考えたのは、アクアCと共に行動する前提があったからです。
しかし今となっては不要な在庫を抱えてしまった事に他ならず、そこには多額の資金も投入されました。結果論ですがアクアCと決別する事態となった訳ですから、私のこの決断は間違っていた訳です。

11月11日設立を目標に7人組が10月末までに入社の意向を明確にする事になっていましたが、9月13日、7人組の代表である統括責任者がアクアCを辞めないと言い出しました。
改めて確認をすると年明けの1月末に退職願いを出し、2月5日以降に入社するとの事です。
まるでそれは、他のメンバーの入社を様子見しようという彼の魂胆が見え透いているようにも思えました。この時点で私は、7人を中心に新会社を作ってはいけないと判断しました。

11月11日設立に参加するメンバーの確認をする為、9月18日(日)に集まって貰えるよう7人組に伝えました。しかし予め彼らと事前に会い「アクアCにお世話になった事」を改めて説明し、単純にアクアCへの不満があっての事なら来なくてもよい。また迷っている、11月11日設立に参加出来ない人も来なくても良いと伝えました。
するとその結果、参加者は4名。7人組から4人組に変わった訳です。
その日の協議の内容は、次の6項目でした。
1.品質管理体制 2.販売体制 3.今後のスケジュール 4.商材 5.ボトル製造
6.組織について・・・など、10時から始まり18時から食事をして終わりました。

当時、中国事業において衛生部ショックがあり、OSGが独自に水宅配事業進出を進める事に対し、OSG役員幹部らは資金的にも精神的にも考えられる余裕はありませんでした。
新メンバー4名に対しての給与等を含めたコストに対して積極的な受入れはありませんでした。理解できます。そこで私はこのコストに関して、軌道に乗るまで私自身が個人として全て負担する事で幹部の負担を軽くするようにしました。

9月19日 敬老の日。翌日の投資家訪問と決算説明会の為に大阪から東京に移動しました。
この夜、私は一睡も出来ませんでした。アクアCの事。新会社ウォーターライフジャパンの事。そしてアクアCジャパンから引取った在庫の事。ミネラル原液施設への投資。
眠れなかったのか、日記には中国ビジネスの事も含め、山積する課題が何ページにもわたって書かれていました。

9月22日、決算発表会を終えて記者懇談会終了後、私はあのカリスマファンドマネージャーF氏(第224回登場)、即ち藤本塾長(仮名)と面談しました。
10ヶ月前の04年11月5日、この日は私と塾長との定例朝食会(第270回)でした。
そこで私は「昨日、アクアCジャパンが倒産した」事を伝え、水宅配事業に参入する事に対し最初に意見を求めたのが、藤本塾長でした。

「迷っているとか悩んでいる時は原点に戻れ」が信条の私は、当然の事のように藤本塾長に面会を求めたのです。あの日から321日が経ちました。1年も経っていないのに、もう数年も費やしたような気分でした。321日、3・2・1。何かのカウントダウンのようです。

追記
悩みを抱える心の内を知ってか知らずか、OSGの教育部長が私にこんな話題を振りました。「湯川社長、長野県伊那地方にある柿打ちという風習・伝統行事をご存知ですか」

話しによると、柿の名産地「市田柿」では毎年実が成る木もあれば、時々成らない柿の木もある。成らない柿の木に向かって「来年は実が成るのか、成らないのかはっきりしろ」と言いながら斧や鉈で幹に傷つけるという。彼は「刺激を与える事によって翌年実が成るらしいです。柿の木は聞いているのですかねぇ。」
老幹新枝(ろうかんしんし)
そうか、今の自分はいろんな課題で傷をつけられているかもしれないが、もしかすれば来年に花が咲き実になるのかもしれない。その為の苦労なら、いとわない。と、柿打ちの話しで気持ちを入れ替えました。
それにしてもこういう時期にこういう言葉と出会うのは、体が欲しがっている食べ物と出会うのと同じだなと、神様は私に老幹新枝のチャンスを与えてくれているのだと思いました。
その夜、ぐっすりと眠れました。
1つの言葉で不眠が治る。改めて言葉は素晴らしいと思いました。

(次回に続く)

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