代表取締役 湯川 剛

意見を発表する。出来ない人にとってみれば、簡単なものではありません。意見はあるのですが、自らの言葉で発言する事がなかなか出来ないのです。
社員教育の場において意見を求めた時、黙ってしまうと前に進まなくなります。例えば、「何故お客様に感謝しなければいけないのか。」こんな質問に対して意見が述べられないのです。しかし気持ちの中では本人なりに意見がある筈です。そこで私が考えた手法は、事前にその質問を投げかけ、回答を書かせる方法を取りました。例えば、「何故お客様に感謝しなければいけないのか。10項目、思った事を書きなさい。」という具合です。しかも回答を1人で出させるのではなく、チームで考えさせる方法を取りました。例えば15名いれば3班に分け、5人としての回答を書かせる訳です。
「よし、これでとりあえずやってみよう」という事で、社員教育がスタートされました。

研修場所は、かつて私の高校時代に剣道の合宿で使った事のある、観心寺というお寺で行ないました。そのお寺は河内長野市(大阪)の山間にあって、寝泊りの準備をして全員が揃いました。模造紙とマジックとベニア板の一式を揃え、研修がいざスタート。ピクニック気分の社員さん達も、お寺という場所設定と真剣な私の様子に、皆も緊張した面持ちでした。数班に分かれて、例の「書かせる」という手法の研修が開始されました。当時の私が彼らに投げかけた問題は、「販売とは何か」「組織とは何か」「何故、お客様に感謝しなければならないのか」というような基本的な事から「私の人生の夢」など仕事以外の問題まで出した訳です。それを2泊3日にかけて徹底的に考え、模造紙いっぱいに書かせました。

書かせた後「書いてある事だけを発表しなさい」と告げました。つまり読めばいいのです。それは難しくありませんでした。ただ、その書いてあることに対して「質問」をしたり、自分と意見が違うと思えば「反論」をして、やはり意見を求めました。さて、意見が出るか否か。

そして人は変わるのか否か。私にとって大きな賭けの研修は、こうしてスタートされました。

(次回に続く)

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