代表取締役 湯川 剛

私は知名度を自分で作っていく事に魅力を感じていましたが、社員さん達は現在の知名度を利用して売っていく方が効果的で、しかも仕入れ値も安くなる方が魅力だという訳です。何となく社員さん達の方が正しい様な気もしましたが、決断する私の心に迷いはありませんでした。

「自分達の商品を作ろう。自分達の商品に名前をつけ、その名前を日本中に売ろう。」

いわゆる鶴の一声≠ナす(笑)。

それからの仕事はネーミングの決定がプラスされました。あーでもない、こーでもない。と、仕事を終えた後、夜中までやっていました。とても1日で決まるものではありません。限られた期日に西山社長へ伝えなければいけませんでしたが、むしろ私は何日もかけさせたといった方が、いいと思いました。社員さん達が商品名を考える、それはもう愛着満載の商品になると思っていたからです。しかし新たな問題も起こりました。新製品が出来上がるまでA社のS商品を売らなきゃならないのですが、「未だ見ぬ商品」への愛着が高まれば高まるほど、現在売っている商品に愛着が薄くなり、売上はドンドン低下していきました。

私はネーミングを考える時に、1つの条件を出しました。それはおかしな表現ですが「治療する治療器」から来るイメージを無くす事でした。例えば治療器を使用している事をカッコ悪くて他人に知られたくないとか、使用者が治療しているイメージを明るくする事でした。「スポーツの後に…、レジャーの後に…、ビジネスの後に…」ピッタリなネーミングを考えて欲しいと言いました。社員さんの中には、アメリカ正副大統領のカーターラクラクやモンデルラクラクとふざけた名前も言っていましたが、ワイワイ・ガヤガヤ話している事に妙な一体感もありました。
ある日、西山社長から電話があり、「こちらのネーミングが決まったので来ないか」。興味を持って駆けつけました。商品名は「ケンコーエース」との事でした。このネーミングに西山社長はニコニコしながら「どう?」と意見を求められましたので「名前から商品の意味が分かります。」と伝えました。しかし帰社後、社員さん達を集めて「ケンコーエース」の商品名を伝え、「これが治療する治療器のイメージの商品名で、私はそれを望んでいない。」

ちなみに「ケンコーエース」は当時の厚生省に申請し、残念ながら却下されました。それは「ケンコー」の名前が「健康」につながるのでダメだとの事でした。結局「ケンエース」で申請が通りましたが、私はむしろそちらの方が良かったと思い、西山社長に「ケンエースの方がいいですよ」と言いましたら、相変わらずニコニコして、「そうかなぁ。湯川さんにそう言われたら嬉しいな。それはそうと、湯川さんのところは、ネーミングは決まったの?」

「はい、決まりました!」

(次回に続く)

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