仕事でつらい時やうまくいかなかった時、名刺入れの中から1枚の自分の名刺を見ます。正しくは名刺の裏側を見ると言った方がいいかもしれません。「株式会社大阪三愛 社長 湯川 剛」とボールペンで書かれてある社名と肩書きを見て、「がんばろう」と思うのです。
かつて会計事務所時代に、利益を上げている社長さんと倒産寸前の社長さんの違いを子供ながらに見ていました。時々、先生が社長さん達に「経営理念のない会社はダメだ」などの話をしているのを、ソロバンをはじきながら聞いていたもので、「会社を設立するには理念が必要なんだ」と習わぬ門前の小僧で経営理念の必要性を感じていました。とはいえ22歳の自分にはまだ「会社ごっこ」的なところがあったのでしょう。
さてリコー三愛グループに三愛精神という経営理念があります。「人を愛し、国を愛し、任務を愛する」であり、昭和21年12月のリコー三愛グループの機関誌「三愛」創刊号に発表されたもので、多分に時代背景があったのでしょう。後に私は5坪の貸室には似つかぬ大きな額に「三愛精神 人を愛し、仕事を愛し、人生を愛せ」と弊社の経営理念を掲げましたが、そのルーツはリコー三愛グループの三愛精神から来ているのです。
若い時にどのような人物と出会い、どのような言葉に触れ、どのような本に出会うかによって、その人の人生に大きな影響を与えると思います。
社名も出来た。なんと経営理念までも準備した。しかしこの段階では、単なる「会社ごっこ」的なところがあり、日々営業に時間を費やす毎日でした。思いは実現する。いつかは独立を・・・。という気持ちはありましたが、何よりも親の借金を返さなくてはならない現実の問題の中で、日々「働く」の二文字に明け暮れしていた22歳から23歳の変わり目でした。そこに上司から1本の電話がかかってきたのです・・・。
余談になりますが、35年の年月が経ち私は三愛石油の幹部の方と、お話をする機会がありました。そして若き日のそのエピソードを語り、「実は市村清社長の著書を、3000冊もある本棚の中を探してみてもないのです。古本屋を訪ねてもないのです。私の青春に出会った1冊の本というより、我社の経営理念にも影響させた書籍です。」とお話したところ、なんと「市村清 生誕100年記念復刻版があるので、お渡ししましょう」と言って頂き、大感激をした次第です。
(次回に続く)
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