代表取締役 湯川 剛

4.学食と割り勘 **************************
夜間大学に通学するようになって、行きたくてもどうしても行く事に抵抗があったのが学食、すなわち学生食堂です。「行きたいな、入りたいな」と思うのですが、結局入るのに1年近く掛かりました。入るきっかけは広告代理店の人と締め切りの関係で、どうしても本日中に済ませなければならない事になり、大学内で打ち合わせをする事となりました。
広告代理店の人が「学食でやりましょう」となり、夢の学食に入る事が出来ました。
トレイを持ったオッサンが学生に混じってレジに並ぶ姿が、どうしても抵抗があったのでしょう。しかし実際に行ってみると教授も並んでいるので、あっけない体験でした。 やはり心のどこかで意識過剰なところがあったのでしょうか。
大阪のミナミや北新地で飲んでいた自分が、学食にどうしても入りたくて、でも行けない。1年間「行きたいな、入りたいな」という新鮮な気持ちになった事は、今も懐かしく思います。

食べ物と言えば、更に新鮮な体験をしました。何の授業か忘れましたが、近くのマクドナルドで教授を中心に集まって話をする事になりました。さて支払いになったのですが、割り勘という事になりました。私は社会に出て30年間、割り勘などした事がありません。本来の私なら「みんな、オレに任せて!」と反射的に言葉が出掛かったのですが、そうすれば教授の分までおごる事になり、何か問題があるのかなと思い、言葉を飲みました。
それにしても割り勘をして、こんなにすがすがしく新鮮で感動した事はありません。これも学生のルールかと思いました。

しかしある時、仕事の関係で電車で帰宅する事になり、帰り際に学生さん達と一杯呑みに行く事になりました。最初は職業や立場を隠していましたが、もう2回生になると学食で何度も打ち合わせをしている姿を学生さんに見られ、何か仕事をしている人と思われていました。そこで支払いは自分が払うと言った時、「いや、やはり割り勘で」と返ってくるのかなとも思いましたが、そこにいた10人くらいの学生は素直に「は〜い、よろしくお願いします」との返事で、これもまぁ〜いいかと思いました。
何かガキ大将になったような気分でした。

5.社員さんの授業参観 ******************************
大学に入学する時、私は社員さんと「4つの約束」をしました。
その1つが「授業は最前列の真ん中で受ける」というものでした。
「たとえ遅れて入ったとしても、最前列のど真ん中で授業を受ける」そういう約束です。
入学した当時、教室の最前列の真ん中に座っているのは私ひとりだけでした。ある種、異様な雰囲気であったせいか、授業をする教授の表情もそんな光景をあまり好意的には受け止めていなかったように見えました。わずか1メートル足らずの距離にヒゲをはやしたオッサンが座っている。近距離で視界を占有するかのような私の存在は、教授側から見ても、かなりの抵抗があった筈です。さぞ複雑な心境であったと思います。そこで私は出来るだけ首を縦に振り、出来るだけ愛想良い顔で相槌打ちながら聞いていたつもりですが、元々の面構えが良い方ではないので教授陣には大変迷惑を掛けたと思います。しかし習慣とは恐ろしいもので数ヶ月も経つと周りも「最前列ド真ん中は湯川さんの席」と思って貰えるようになりました。

さて、そんな「授業は最前列のド真ん中で受ける」という約束を守っているかどうかを確認する為だったのでしょうか。ある社員さんが教室にやってきました。いわゆる「授業参観」です。いきなりの事で私は驚きましたが、思わずVサインを出しました。
後から彼の事について同僚の社員さんに聞いてみると、彼は専門学校卒業で私が大学に行くと決まった時、「自分も大学に行ってみたい」と思っていたようで、授業の体験も兼ねて大学にやって来たという好青年です。
その後、彼は社内結婚をし、奥さんの実家の果樹園を引き継ぎ、社長として現在活躍しています。いつか機会があれば大学に挑戦して貰えればと思っています。

6.接待の場所。ミナミから関大前に変更 **********************
夜間大学に行くようになって一番問題になったのは、お客様とのお付き合いでした。 全くしないという訳にもいきません。 「4つの約束」の1つに、「通学できる状態なのに行かないという事はしない。すなわち行けるのに行かないのはサボっている事になる」との事です。
問題は夜の接待でのお客様とのお付き合いは「授業を受けられる状態なのか、そうでないのか」でした。この判断が大変難しかったのです。 勿論、接待も重要な仕事でした。そこで事前に2時間目が休講が分かった場合にその時間を利用してお客様との食事をします。しかし大学から市内に戻ってくれば、食事の時間の開始が遅くなるのでが、殆ど食事の場所は関大前になっていました。 事情を知らないお客様は「えっ?いつものミナミじゃないの?何故、関大前で食事?」と多くの方に迷惑をかけました。

7.脳みその良し悪しではないんだ! ************************
授業を受ける時は真剣でしたので、教授の話の殆どはノートに書き写していました。
私には予習復習する時間などは全くなく、授業を受けている時間だけが勉強する時間でしたので、真剣勝負でした。 私の学生時代は成績優秀な学生ではありませんでしたので「成績の良い人は特別脳みそが良いのだろう」と思っていました。しかし大学に行くようになって分かった事があります。

実は頭の良し悪しとは脳みその出来不出来に関係なく、授業を聞いているか、聞いていないかの因果関係にあると認識しました。

私は教授が授業で話している内容を真剣に聞いていれば、どの部分が試験に出題されるのかが分かるようになってきました。この授業で教授は何が言いたいのかが分かってくるのです。言い回しやそのページから、何が重要なのかが別に頭が良くなくても聞いていれば分かる話です。私は如何に学生時代、授業中に気が散漫になっていたという事を改めて確認しました。同時に「結構、自分で頭がいいじゃん」とテストの結果をみて思いました。

「4つの約束」の1つに「成績表は必ず公開する」という約束には元々自信がなかったのですが、心から約束をしてやってよかったと思いました。但し、英語だけは論外。基礎が悪すぎる。

8.日記 ひと口メモ *******************************
4月 8日(金)英語 − 授業、全くわからん。アメリカより厳しい。
4月15日(金)英語 − 遂に大恥をかいた。当てられたが読めない。
4月22日(金)英語 − 事前に当てられると言われていたが、無事終わった。
5月18日(水)経済原論 − ふざけるな!休講。 大事な仕事を断って来たのに。事前に知らせろ。
5月24日(火)中国 − それ、どこの言葉?と恥をかく。
6月 3日(金)英語 − 休講。こんなに嬉しいとは思わなかった。
6月30日(木)社会科学 − 論文提出「水を買う生活文化は定着するか」コレやろ。
7月15日(金)英語 − テスト。メチャメチャでした。
9月27日(火)英語 − やったぜ、英語。57点。
10月20日(木)保健体育 − やった。優。
10月28日(金)中国 − また、恥かいた。

(次回に続く)

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