代表取締役 湯川 剛

納得いかない苦しみが人を育てる。
辛い事が多いのは、感謝を知らないからだ。
苦しい事が多いのは、自分に甘えがあるからだ。
悲しい事が多いのは、自分の事しか分からないからだ。
心配する事が多いのは、今を懸命に生きていないからだ。
行き詰まりが多いのは、自分が裸になれないからだ。

運命はあなたの心のままに表れる。納得いかない苦しみが人を育てる…のか。

この文章は1998年9月27日の私の日記にある文章から転記して書いてありました。
私は1998年9月25日に大変辛い思いを経験しました。
当然、辛い経験は毎年毎月していますが、改めてこの日の日記に「もう2度とこんな経験は、これで終わりにしてほしい」と書きました。

この夜、私は入浴中にOSG幹部から1本の電話を受けました。
新入社員が駅のホームで通過する特急電車に巻き込まれ病院に運ばれた、との事でした。
はじめは意味が分からずいたのですが、とりあえず家を出ました。
1998年春に新卒入社の渡辺君。彼は入社当時から抜群の存在感を周囲に与えてくれていた大変素晴らしい青年でした。新入社員の立場でしたが、私と行動する事が多く「ナベ君、ナベ君」と呼んでいました。それがどうして事故にあったのか、彼の自宅に行くまで分かりませんでした。ただ無事でいてくれ、と祈るばかりでした。
しかしその思いも虚しく、彼は帰らぬ人になっていました。
聞くところによると、ホームで携帯電話を使用している時に特急が彼を巻き込んだとの事でした。私は事故が起こった同時刻に、事故現場である塩津駅のホームに立ちました。私は弁護士と相談し、塩津駅に安全柵がない事も含めてJRに対して安全対策面に関し強く抗議しました。
翌日も彼の友人と同時刻に現場に立ちました。結果的にはJRには責任はないとの事で、自分の無力さを感じました。

株式公開の夢を新入社員と共に語り、その中にナベ君がいました。
立派な大学を出ているにも関わらず、我が社を選んでくれた事に私はもしかすれば同期の誰よりも話し合った時間が長かった事は、この時の事を予測しているのかと思う位でした。

お通夜や告別式で号泣した事は、今でもはっきりと覚えています。
そしてナベ君と一緒に上場する事の話しを何としても実現したいと思いました。

冒頭に掲載した言葉は、日頃の私にとっては受け入れられる言葉です。
しかしこの辛い経験の中でその言葉は、私を混乱させるものでした。

納得のいかない苦しみが人を育てるというのは、本当なのか。
辛い事が多いのは、感謝を知らないからだ、というのは本当なのか。
苦しい事が多いのは、自分に甘えがあるからだ、というのは本当なのか。
悲しい事が多いのは、自分の事しか分からないからだ、というのは本当なのか。

私は、人に負けない位、感謝の気持ちを持って生きているつもりでした。
私は、自分に厳しく生きているつもりでした。
私は、自分の事しか分からないような生き方はしていないつもりでした。

にも関わらず、こういう悲しい事・辛い事を経験しましたが、もうたくさんだと心から叫びました。

私は毎朝、本社社長室にある神棚に手を合わせる事から1日がスタートします。
般若心経を唱えた後に「今日も社員の皆さんが1日事故のないようにお願いします」と願って仕事に取り掛かります。しかし、こんな日が起こるのです。

辛い事が起こる人生の不条理を教わった出来事でした。

(次回に続く)

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