いよいよ私の個人的な部分に対する質問に突入しました。どのような質問が向けられるのか、興味を持っていましたが、実際は私の想定外の質問でした。
「我々の調査によると湯川社長は、学生服を着た中・高校生が喫茶店などで喫煙している場面に遭遇すると注意をされるとの事ですね。」
株式公開とは全く関係のない質問に、私はキョトンとしました。
「そういう事があるのですか。」と尋ねられ、質問の意図が分からず、あまり重要な質問でないと思い「えぇ、まぁ〜」と、こちらも適当に応えました。
気のないテキトーな回答に思えたのでしょう。「あるのですね。」と再度真面目な顔をして質問をされたので、ハッキリ「ありますよ。」と応えました。重ねて質問されるのだから、その事が評価対象となるのかと思ったのです。プラス的評価と勝手に思いましたが、実はその逆でした。
「株式公開をした後は、そのような事はやめてほしいのです。」別の面接官が言いました。
予測と真逆の評価に私は訝(イブカ)しげな顔をして、むしろ反発に近い声でどうしてですかと応答しました。そんな私の顔を見たのか、審査部長が「本来は湯川社長のやっている事は大変重要な事です。むしろそういう場面を見ても、見て見ぬフリしている我々大人がダメなのです。」と私をなだめるように、その理由を述べました。
「社長は株式公開をすれば公的な立場です。そのようなお立場を前提に申し上げます。最近の中・高校生は我々の想像を超える行動に出る場合があります。今まで社長の雰囲気や気迫で子供達も黙って引き下がっていたかもしれませんし、幸いにも今まで無事故だっただけかもしれません。これからは絶対にやめて下さい。社長自身に万一の事があれば、会社に大きな損失を与えます。」
審査部がわざわざこの「トップ面接」時に質問するだけの理由があった訳です。
「子供を注意しない大人」より、「万が一」の出来事の方が株式上場には重要であるという事に、妙に納得をしましたし、改めて「凄い」と思いました。
勿論、審査部の方々は自分達がこのような質問をし、喫煙する子供達への注意をやめるようにアドバイスする事そのものは本来本位ではないと言われました。大人の立場としてはやらなければならない事。しかし公的な立場である経営者としてはこのような行為は難しい。このような質問をする事も理解してほしいと言われ、改めて審査部の方々の気持ちに私も理解を示しました。
面接も終わろうかという頃。一同、緊張が解けた雰囲気の中で「最後に、何か湯川社長からおっしゃりたい事はありませんか」と促されました。
個人的な質問はこれで終わりですかと私が尋ねると、そうですとの事でした。
面接前からかなり緊張していた割には、何だかあっけなく終わったという感じでした。
一呼吸おいて、私が「言いたい事があります」と言うと、面接官全員が穏やかな顔で
「どうぞ」と勧められました。
「私には隠し事があります。」
審査部の方々が全員、穏やかな顔が一変して緊張した顔つきに戻りました。
「どうしたのですか。当初に申しました通り、口外は一切なく、ここだけの話です。」
「隠し○○が・・・」
(次回に続く)
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