「信念の魔術」(第10回に掲載)の教えの「念い(想い)は実現する」で、会社設立は実現させてくれましたが、継続する事の念いは足りなかったみたいです(笑)。
小さな部屋でも机ひとつ、自分ひとりは結構広く感じました。社員とビルの下で会って「おはようございます」と言っても、入る部屋は別々でした。「社長、頑張ってる?」はかなりキツい冗談でした。何せ彼らは製造発売元の社員であり、私はそこの小さな代理店の社長さんなのです・・・。車はなく、机はその会社の好意でひとつ借りました。
仕事は1日2台の浄水器を紙袋に入れて、売り歩くことです。ちなみにその会社は百貨店や生協に製造販売する形式を取っていましたので、私のような立場は初めてだったらしいです。その会社から見れば大阪進出で人の採用をしなければいけないときに、7人もの社員を入れてくれて、しかも社長は自分ひとりで売って歩くというのだから、相手側から見てリスクのない存在だったのでしょう。さらに社長と言ってもたかだか24歳の若者だから、ダメなら採用しようとでも思っていたかもしれません。
とにかく電車に乗り、紙袋に2台の浄水器を入れて歩いた訳です。正直、「オレは何をしているのか」と思いました。確かに会社は倒産していないが、その体は成していなく、実態的には会社でも何でもないのです。ちなみに名刺には何と、そこの会社の社名が書いてあり、部署は第二課となっていました。当然、小さなオフィスに三愛精神の社訓など、掲げられる筈もありません。名前も実態も完全に、そこの会社に取り込まれている形でした。こんな事なら英会話の教材を売っていたときと、何も変わっていません。むしろカッコイイオフィスで数十名の部下がいて、収入もそれなりにあった当時のほうが良かったくらいです。
「なんじゃ、こりゃ」ってところですが、不思議な事に不満や悲観は微塵もなかったです。とにかく売って、稼いで早く部下を引き取らなければと思っていました。勿論、部下に戻ろうという気持ちがあるかないかは、知る由もありません。朝の挨拶を見る限り、そんな気持ちはなさそうですが、私ひとりがその思いでやっていました。
人間は不思議です。夢や希望が不安より大きければ、それは不安にも不満にもならないのです。若さがそうさせたのか知れませんが、ただただ会社は続けなければいけない、という思いが支えであり、未来イコール大きくなるものだと思っていた時代でした。
(次回に続く)
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