代表取締役 湯川 剛

朴さんの話の続きです。
大阪に戻る新幹線の中、中国一行は終始無言。朴さんはその様子から当初の目的であった家庭用アルカリ製品以外の製品も発注してしまった事を後悔しているのかなと思ったそうです。
大阪に着いたその夜、朴さんをはじめ海外部の社員さんが彼らを居酒屋に接待しました。
日本酒を飲み、いわゆる中国式の「乾杯!乾杯!」と杯を交わす彼らの様子が昼間と違って大変陽気になりました。そして想像もしない発注数量を告げたのです。
酔った勢いでの発注だと、その数量に戸惑った朴さんは翌朝、改めてその数量を確認しました。
しかし翌日もその発注数量が変わる事はありませんでした。本当に家庭用アルカリイオン整水器だけでなく、業務用も殺菌水製品も必要なのか、重ねて確認した程です。

何よりも家庭用アルカリイオン整水器の初回出荷の数量には驚かされました。
ただT社の金菫事長からは何度も「湯川社長に会わせて欲しい」と言われたらしいです。

今さらSARS問題を理由にも出来ず、ひたすら「出張中の為、会う事は難しい」と同じ回答を繰り返していましたが、それでも金菫事長は諦めきれなかったのでしょう。
帰国する一行を見送りに空港まで行った朴さんに金董事長は「では、今度は中国で会いたい。是非とも湯川社長に中国へ来て貰いたい」と言い残し、機中の人となったそうです。

翌7月、香港上場会社T社の全国代理店が集まる合宿に招待された朴さんは上海へ渡航。
そこで見た光景は、かつて日本企業が70年代に盛んに行なわれていたモーレツ社員教育そのものが、中国の合宿所で行なわれていました。
T社の全国代理店経営者が真面目に、そして熱心に取り組む姿を目の当たりにした朴さんは
「これは凄い集団だ。OSGの企業文化にも合うのではないか」そう直感したそうです。

この時も「どうして湯川社長は来てくれないのだ。我々はOSGに凄い発注をしたはずだ。どうしても中国に来て欲しい」と金菫事長は改めて私の訪中を尚も求めてきたとの事です。
金菫事長の話によるとOSGを訪問し、OSG社員と出会った時、「これは我々と同じ企業文化を持った会社だ」と感じたらしく、だからこそ当初の訪日の目的であったアルカリイオン整水器の技術交流以外に、もっとT社・OSGとの企業文化の交流を図りたいのだと、その真意を熱く語ったそうです。
「私も同感です。本日、この合宿に参加して初めてその事を理解しました。帰国後、すぐに社長に報告します」と訪中した朴さんも同じ思いに至った事を金董事長へ話したという事です。

韓国セミナーの控え室で、6月に訪日した中国一行との出来事を朴さんはそのように私に報告し、念押しするように最後にそう付け加えました。「湯川社長、是非中国に行って下さい。」

私としては第5次4カ年計画の2大目的の1つである海外進出に自ら力を入れていなければならない決断をしていましたので「よし、分かりました。スケジュールがいっぱいなので9月に何とか行きましょう」

この香港上場会社T社とOSGの出会いこそが、その後の中国進出に大きな影響を与えてくれるのですが、同時に両社のそれからの10年間の凄まじい展開は神のみぞ知る事です。

(次回に続く)

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