代表取締役 湯川 剛

2003年12月。恒例のホノルルマラソン参加で03年の海外渡航の締めくくりとなる筈のところ、金菫事長から2004年に向けてどうしても年内最後の会議を行いたいとの申し入れがありました。彼は自分がこうしたいと思えば、相手の都合は何とでもなるという考えの持ち主。それ故、国営アパレル企業の工場長を経て1992年2月にわずか数名で起業した11年後、約300人の社員と約300社の中国国内ネットワークを作り上げ、香港市場に上場するまでに会社を成長させる事が出来たのでしょう。
そんな彼に同質の匂いを感じる私は、今回は彼に合わせる方向で時間をやりくりしました。

12月16日、ホノルルマラソンに参加した私は、成田16:45着で帰国しました。
そして翌17日、年内最後の早朝電話会議に参加し、再び成田へ。広州行き成田14:20発便に搭乗。ハワイから帰国した21時間後に成田で出国手続きするという慌ただしさです。

4泊5日の中国出張。金董事長は当初「2004年度の重要な会議」という理由で私に年内最後の訪中を要請してきたのですが、広州空港に着くなり「実はお客様大会で湯川社長が来るのを待っている」との事。2日間、広州エリア内2か所の代理店でのお客様大会参加と社員教育で滞在スケジュールが組まれていました。
結局のところ、金董事長のいう「2004年度の重要な会議」、つまりT社を通じて中国進出を計画する会議日程は2日間だけ。金菫事長らしい対応に苦笑しました。

2日間の会議の主な内容は次の通りです。
①T社との合弁会社を設立し、中国でOSGのアルカリイオン整水器を生産開始日程。
②合弁会社の場所や資本金及びその比率
③設立までの約半年間は、日本からの輸入品として販売するので納入価格と輸入台数の決定。
の3点でした。

輸入税等を加算するとOSG整水器は中国産整水器の約2倍以上の市場価格となる為、販売台数がかなり難しいのではないかと尋ねたところ、彼は終始強気な発言を崩しませんでした。
多くの中国人経営者と面談していますが、その殆どの経営者が口にする言葉があります。
「中国には13億人の市場がある。日本の10倍の市場だ。日本は既に成熟化しているが中国はこれからの市場だ」と。13億人を14億人と表現する人もいます。
いずれにしても一番面白いのは「13億人の市場」と口にする経営者の殆どが、まるで自分の市場のようにいう点です。
勿論、金菫事長も13億人市場は自分の市場のように発言する中国人経営者の1人です。

当然の事ながら、そんな強気な発言の意図するところは納入価格の値下げ要求でありますが、一方で輸入台数は控えめな数字を言っていました。
わずか3ヶ月の間に4回も訪中していると、何となく中国人気質が分かってきました。
そこで私も金菫事長に負けないくらい強気な価格と台数交渉に挑みました。
2日間は中身の濃い会議になりました。トップ会談とはいえ、両社ともに上場会社ですから独断で勝手に決める訳にもいかず、その都度、日本や香港に電話で確認をする必要がありました。
「最終決断はトップ判断で決定」と両社とも役員達の合意を得ていた為、責任重大です。
当然わずか2日で決めるような内容ではないのですが、価格と販売台数は最終的にOSG側にとってほぼ満足な交渉で終わりました。その理由は簡単です。
この3ヶ月間で主要代理店に対して、お客様大会や社員教育等、OSG側がT社に大きな影響力を与えていたからです。残りの課題は年明けのT社新年会で行なう事になりました。

2002年2月から始まったOSG中長期計画「第5次4カ年計画」として、大きく2つの目的を掲げていました。1つは事業領域の拡大。2つ目がグローバル化。
正直なところ、2大目的ともに具体的にこれといった事案が事前にあった訳ではありません。
しかし不思議なもので「グローバル化」を唱えた後、偶然にもT社との出会いが生まれました。少しずつですが、OSG製品が世界の舞台で動こうとしている予感を感じました。

12月31日朝、毎年我が家の恒例であるお墓参りをして、慌しい2003年も終わりました。

追記
2003年12月31日。この年の大晦日には、こんな出来事がありました。
大晦日の夜といえば、NHK紅白歌合戦。その紅白の裏番組として、日本テレビ・フジテレビ・TBSと3局が前代未聞の格闘技番組を放送。如何に紅白歌合戦の視聴率を崩すかでした。
その結果、曙とボブ・サップの試合で話題を呼んだK-1(名古屋開催)を放映したTBS系が、紅白歌合戦を視聴率で抜く史上初の瞬間的視聴率43%の快挙。ちなみにフジテレビ系がプライド(埼玉)を放映。

日本テレビ系はイノキボンバイエ(神戸)で当然の事ながら、私は猪木さんの関係で神戸の会場にて観戦。イノキボンバイエの関係者の殆どが、自分達の試合の合間に曙とボブ・サップ戦をテレビ観戦する光景に違和感を覚えましたが後日、視聴率43%と知って妙に納得。
そのせいか、神戸の試合会場は寒くて、震えながら観戦していた事が思い出されます。

(次回に続く)

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