代表取締役 湯川 剛

わずか数ヶ月の命であった化粧品販売。倒産寸前で出会った浄水器。創業メンバー4人のうち1人は父親の転勤で東京へ。私の弟は姉の協力でカネボウ化粧品店を運営する為に退社。女性は結婚で実家に帰る。食べさせる事が出来なくて他の社員さんは浄水器メーカー大阪支社に預けて、「社長ひとりの会社」となりました。このメーカーから時々、「湯川君、うちの社員にもセールスの仕方や苦労話を教えてあげてほしい」という事で、何度か呼ばれた事があります。すっかりメーカーの社員になった元社員もおり、哀れみを見るような顔で私を見ていました。「社長、大変やね」(笑)。

セールスの話と言えば、一軒一軒販売をしていた自分の経験を話すしかありません。話し終わった後、「そういう事で湯川君も頑張っているのだから、君らも頑張るように」となる訳ですが、「湯川君の話を聞いたけれど、上手くはいかないぞ」という文句も言われた事があります。「ならば呼ばなきゃいいのに…」と思うのですが、週末には必ず呼ばれて話をさせられます。

私が今も心に残っている話があります。

それは私の経験で「1000軒程度訪問すると100人のお客様は私の話に耳を傾けてくれる」という事です。これをメーカーの社員さんに話すと「…という事は10軒に1軒の割合でお客様と会えるという事ですね。」となり、文句は「今日は30軒程回ったけど、お客様は誰も相手にしてくれなかった」という事です。すなわち今日は30軒程回ったがデータ上でいけば3軒のお客さんは話を聞いてくれる筈だという事です。ところが30軒に1軒も聞いてくれないので、31軒目から動きがトタンに悪くなり、殆ど50軒も回りません。

「1000軒訪問して100人のお客さんが聞いてくれる」という事は、900軒までゼロでいいのだという事が分かってくれないのです。勿論、900軒のゼロを経験した私ですが、901軒から100軒連続で会った事はありません。1000軒訪問して100軒会えるという経験則は「10軒に1軒は会える」という法則ではなく、900軒まではゼロでも、気持ちが切れない事を言っているのです。ところがわずか30軒や50軒で気持ちが切れるのです。私はメーカーの社員さんに社員教育をするより、自分の社員さんを持とうと、この時に思いました。メーカーに預けた社員さんは、2人だけ戻ってきましたが、残りは安心な会社に残りました。そこで改めて新聞で人材募集を行なった訳です。

当時は今のようにインターネットや求職雑誌がなく、新聞のみで募集するのですが、これが結構高くつきます。30行や50行を使う募集欄は目に付くのですが、それにはかなりのお金がかかって、とてもじゃないですが私達には無理でした。わずか5行で如何に来て貰うかですが、その保障はありません。私はわずかな行間で自ら求人の文章を作りました。そして、必ず面接日の初日を「友引」にしたのです。何の根拠もないのですが、「友引」の日に掲載したのです。そしてその原稿を神棚に乗せ、祈るような気持ちで「どうか人が来てくれます様に」・・・。その経験があるのか、今になっても採用に対しては興味と神経を使うのです。

こうして再度仕切り直しの営業部隊を集めるのでした。

(次回に続く)

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