代表取締役 湯川 剛

この頃の私は、ビザ不要で滞在可能な最長15日間、つまり月の内の半分を中国で過ごしていました。当然、日曜日も休日も関係なく、フルに15日間を使います。
OSGが製造担当、T社は販売担当というのが本来の役割分担でしたが、私は製造を幹部社員に任せ、ひたすらT社の代理店300社を順次訪問しながら販売支援に奔走していました。

OSGの強みは「経営トップと現場が近い事」です。
中国進出においても、このOSGの強みを遺憾なく発揮する事が戦略そのものでした。
まず「トップの顔」を覚えて貰う事。「OSGとはどのような会社なのか」「湯川とはどのような男なのか」この2点を浸透させる事に時間を費やしました。
当時50半ばでの私の人生の持ち時間も決して長くある訳ではありません。それだけに動ける間にしっかりと中国の大地に楔を打って、次に繋いでくれるだろうOSGの若い社員さん達の為に目いっぱい頑張ろうと思いました。幸いな事に中国という国が嫌いではありません。
上向き、前向き、外向きの中国人はかつての我々の青春時代の若者と同じです。
よく現在の日本の若者に対して、下向き、後ろ向き、内向きと言われますが、その事自体は私自身分かりませんが、間違いなく中国人は若者でなくても上向き、前向き、外向きです。
彼等は自分の意見をはっきり述べる事と同時に、こちらが意見をはっきり発言すれば理解を示します。私のような性格は中国人の方に合っているそうです。

さて、私の中国における15日間のスケジュール内容は大体、下記のようです。
日本出発後、例えば北京に到着したとしましょう。空港からまずは第1訪問先エリアへ移動。
大方、夕方近くに目的地エリアに到着し早速、代理店主催の夕食会に参加。大体が地元の有力行政責任者等がゲストとして招かれ、1卓に10名~15名程度の円卓が2卓程の食事会。
日本人の感覚でいうと、円卓に豪華な中国料理が並べられ、食事時間は3時間前後。日本人と初めて会うという中国人も多いので、白酒で乾杯攻めのまさに宴会状態。

翌朝だいたい8時にそのエリアのお客様集会に参加し10時過ぎに終了。お客様の半分は既にアルカリイオン整水器を使っているお客様で、残り半分はそのお客様が連れられてきた知人等で、いわゆる将来のお客様候補。既存のお客様の中には中国メーカー品を使用されている場合も多く、その為、下取りして弊社の製品を購入される場合もあります。
また弊社の製品を使用しているお客様が親族の為に追加購入される場合もあり、1人のお客様がトータルで10台以上購入されるケースも珍しくありません。中国では特別裕福なお客様でなくても余程の内陸部か農村地域以外は購買力があります。殆どが夫婦共稼ぎなのかもしれません。そんなお客様を前にしてOSGの紹介等をしていく訳ですが、私は最初の間、訳も分からずに中国側の渡されたメモを読んでいましたが、この時分になると自らの言葉で話します。日本の水事情や人間の身体と水分の関係等、時には冗談を織り交ぜて話していました。
午前中に時間があれば、そのエリアの代理店社員さんとミーティングをしたり、1時間程度の社員教育を行なったりもします。

お客様集会を終えた後、代理店社長らと昼食をとり、次のエリアに移動します。
殆どが隣接するエリアですが、中国は広いので飛行機移動が多いです。時々、フライトの関係や空港がないエリアでは車移動の場合があります。これが大変です。大体6時間くらいかかりますので、13時に出発しても19時頃に到着。中には7~8時間を要する車移動もあります。その場合は移動途中の目的地の中間あたりで、次の代理店が私を迎えに車で待機しています。日本の事例でお話しましょう。例えば東京から広島まで車で移動すると仮定した場合、途中の静岡か名古屋あたりで広島からの迎えの車がやって来ていて引き渡される、そんな感じです。いずれも到着すれば必ず食事会があります。
中国の事ですので、飛行機が大幅に遅れる事もしばしば。それでも1~2時間は待ってくれています。私の方が恐縮するのですが、相手は「わざわざ日本から来てくれたのだから」との事。「朋友、遠方から来る」の精神でしょうか。その為、夜10時から夕食という場合もあります。

こうして前日夜に現地入りして到着後、宴会に近い夕食会に参加。翌朝のお客様集会でお客様にご挨拶。その後、社員教育等の予定をこなして昼食後、次のエリアに向けて移動。そして到着後はまた宴会状態の夕食会。
こんなスケジュールが帰国する前日まで続き、14泊15日の日程で12~13社を訪問します。
我社の「現場を知る」という経営方針を貫くには、まさに体力がなければ中国進出は無理な話です。決して若くないこの身体にとってはきついスケジュールですが、今まで1度たりとも嫌だなと思った事はありません。見知らぬ土地に行く。見知らぬ人々と出会う。

中国全土の今まで名前すら知らなかった街に行き、そのエリアの代理店の方々がOSG製品を販売して頂いている。そして買って頂いているお客様がいる。それを想像するだけでも楽しいです。それに身体がきついから行くのは嫌だという事はないのです。

(次回に続く)

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