代表取締役 湯川 剛

2006年11月8日、蔵王ロイヤルホテルにて日本機能水学会が開催されました。
韓国からはN製薬が、中国からは中国保健協会の幹部と共に新しく就任した天然社の林菫事長や金鋭総裁が参加。この時すでに天然三愛の合資会社解消と独資への方向性が決まり、従来通り天然社との関係は総発売元と製造元と決まっていました。

07年2月、旧暦で正月を祝う(新暦2月20日)中国にとってまさに年末の慌しい2月9日に私は北京から天津に入り、翌10日に天津代理店のお客様大会に参加した後、上海で金鋭総裁と会うことになりました。

そこで金鋭総裁から「天然社を辞める」と聞かされました。天然社菫事会から事業不振の責任を問われた事がその理由だという事でした。衛生部ショックは、ここでも大きな影響を与えていました。「天然社を設立した大株主の金鋭が辞める必要は無いのではないか」と私は考えていましたが、真の大株主はアパレル経営者である華僑のタイ人だとの事。「天然社主席」という肩書きの真の大株主を、紹介された事がありました。この大株主と一部の菫事らによる事業不振の責任追及が「それなら私が責任を取って辞任する」という結果になった訳です。
金鋭を辞めさせる事が目的ではなかった大株主や菫事らは辞任撤回を求めたらしいのですが、既に後の祭りでした。私は「金鋭兄弟。本当に無責任だ。これから私はどうしたらいいのか。天然三愛はどうなるんだ」と、今一度辞任撤回を考え直すように説得に当たりましたが、自分が居なくても変わらず天然社と取引すれば良いと、その決意が覆る事はありませんでした。
中国功能水学会設立に向かって相当なエネルギーを掛けていた彼が抜けてしまうと、振り出しに戻ってしまいかねない事が懸念され、そうすると第3・第4の衛生部ショックが起こるか、もしくは中国市場にアルカリイオン整水器という製品が育たないかのいずれかが想像に難くない訳で、そうすればOSGの中国進出も水の泡になる可能性が潜んでいる訳です。そんな話を私がすると、彼は「湯川兄弟。心配するな。天然社を辞めたとしても、中国功能水学会設立は責任を持って行なう」と力強く言ってくれました。天然社を離れた後も、これまで通り兄弟のように付き合う事を改めて確認し、「天然三愛に入社しないか」と彼に提案してみました。
この提案に金鋭氏は驚き「ありがとう。その気持ちは大変嬉しい。しかし私も上場会社の菫事長を勤めた立場なので法的な問題がある。春までは天然社に在籍の身なので、合法的な方法で考えて見る」との事で、この後2人は夜を徹して白酒を痛飲しました。
私は通訳として同席していた天然三愛(後の欧愛水基)の社員さんに、しっかり通訳して欲しいと念押しして「金さん、オレはどんな事があっても金さんを守る」と言うと、日本語の分からない筈の彼はその言葉が通訳される前に、まるで「わかった、わかった」とでもいうように首を縦に振り、握手を求めるように手を差し伸べて来ました。そして「このような状況になって心配をかけて申し訳ない」という彼の言葉が通訳されるまでもなく、中国語のわからない私も彼と同じく「わかった、わかった」と首を振り握手をしている手を更に強く握りました。
「仕事だけの付き合いではない。一生の付き合いです」ともう一度社員さんに「しっかり通訳して欲しい」と頼みました。
今回の出来事で私は、改めて激動の中国ビジネスの慌しさを心の底から感じました。
「まさか、そんな事が」という日本では体験した事の無い出来事が、この数年間に数多くありましたが、今回の出来事は最上級の中の1つでした。

同時に互いに異国で生まれた者同士が「兄弟」と呼び合っているこの縁(えにし)に、人生の面白さを感じました。

(次回に続く)

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