代表取締役 湯川 剛

新社長の選出は決算説明会を2日後に控えた3月26日の臨時役員会議にて決議。
決議後に全役員を改めて別室に呼び、新社長を目の前にして、
「ご存知のように2月1日の夜、役員の皆さんが投票した結果、溝端社長が選ばれました。
よってみんなには選んだ責任がある。支えなければならない責任もある」とまずは伝え、その後、私が溝端社長に言った内容に少なからず、全役員には衝撃が走ったと思います。

「余りお酒を飲まない溝端社長でも若い時は私や会社、その時の上司を酒の肴に不満や批判をした居酒屋トークもあったと思います。それ自体は何の問題もなく自然な流れです。また役員同士が駆け出し時代、新社長と同僚として悪ふざけをした事もあるでしょう。それが若気の至りという事でその事自体も問題ではありません。楽しい時代のよくある話です。
問題は、そのように新社長との駆け出し時代の過去の言動を他の役員が新社長の鬼の首を取ったように、例え冗談のような表現であれ、他の同僚や部下の人達に言いふらすような事があった場合の事です。そんな時、溝端社長は遠慮なくその役員を解任しなさい。そのような対応をしなければ組織として困ります。まさか努々(ゆめゆめ)ないと思いますが〝選んでもらった〟等の義理は、一切感じなくていいです。昨日までの同僚は全て溝端社長の配下です」と伝えました。

社長とは組織のトップに君臨し、まさに会社の顔になる重要な立場です。組織のトップである社長は組織を動かし、組織を維持させるだけではなく、組織を磐石なものにしなければならないのです。私のような創業者の場合は、自分の納得の下で進めていく訳です。例えば中国に進出する、水宅配事業に参入するのは、納得した上で進めている訳です。それをいきなり新社長が引き継ぐ訳です。それは大変な事です。新社長は全ての部署を知っている訳ではありません。営業部門にもいろいろな部署があります。まして未体験な生産部門や管理本部等も全て社長の配下になる訳です。子会社に対しても社長の権限の範疇に入ります。全てを把握するにはかなりの時間が掛かるかもしれません。それをこれから溝端新社長が引き継ぐ訳です。

ここで溝端新社長の経歴を簡単に話しますと、彼は高校卒業でOSGに入社してくれました。
私と社会に出る境遇が良く似ています。私の場合、父親の倒産で大学進学を断念しましたが、彼も大学進学の準備の時にお父さんが経営をしていた店舗が火災にて全焼。事業の再建により、止むに止まれずの進学断念です。高校3年生の時、詰襟の学生服を着て面接を受けに来た事は今でも覚えています。商人の家で育った環境なのか、とにかく数字にはめっぽう強いです。また入社当時から仕事に対しての飲み込みも早く、責任感の強さ等はご両親の教育がしっかりしていたという事です。

業績が悪化していた役員会で「どうしてですか。営業本部の体たらくを何故、この役員会議で発言してはならないのですか。むしろこの役員会議で明確にするべきです」(第346回)と私に噛み付き、自ら「営業本部長を私にやらせてほしい」と言わせた事も責任感が故の事です。彼の性格はどちらかと言えば、他人を押しのけてやるタイプではありません。無駄口を話す事は私の知る限りありません。そんな彼が大組織から来た当時の営業本部長に対して「このOSGでは通用しない」と言いきったのです。周りはそれを感じていても、口に出す人などは殆どいなかったのですが、止むに止まれず出た言葉であれ、言うべき時は明確に発言します。
他の役員達もそこのところをしっかりと見ていたのでしょう。
私は「運に賭ける大仕事」に勝利の女神が協力してくれたという事です。
こうして溝端新社長が誕生しました。溝端社長の「経営者の道」すなわち全社を背負う責任感と義務に対し、私がどれだけ負担を軽くして上げる事が、私の新たな義務になりました。

追記
選ばれるという事は、必ずしも喜べる事ではない。学級委員長に選ばれたら、クラスメイトより悪い事は出来ない。組合長に選ばれたら、本業以外の時間がなくなる。指揮官に選ばれて負けたら、戦犯で処刑される。そして社長に選ばれたら、孤独になる。選ばれるという事は、一時の名誉かもしれないが後にはむしろ苦しみの連続が待っているだけ。
という文章を若い頃に読んだ事があるが合点のいく話で今も不思議と覚えています。
新社長には本当に苦労をかけて申し訳ないという気持ち以外にありません。


(次回に続く)

ご意見、ご感想は下記まで
support@osg-nandemonet.co.jp