代表取締役 湯川 剛

久しぶりの水宅配ビジネスの話になりますが、08年に欠かす事の出来ない出来事がありましたので、本日はそれを書きたいと思います。

08年の年明け早々、溝端社長から相談したい事がありますと告げられました。
長年、取引していたLPガスの最大手岩村産業が、OSGにとって同業社である日本職販社と取引する事になり、OSGとの取引はこの1月で終わるという内容でした。
「それはおかしな話だ」
それが話を聞いた私の第一声でした。既に10年以上の取引があり、多くの岩村産業の取引先とも親しく付き合っている関係にあり、OSGも大変お世話になったが、岩村産業もOSGによって得た利益は計り知れないものがある筈です。原因となる大きなミスをOSGが犯した訳でもなく、突然の取引中止は驚くより狐につままれたような気分でした。
「ガスと水」という一見真逆な製品同士を、日本の都市・LPガス業界に広めたのがOSGである事は業界の誰もが知るところです。岩村産業においては1999年に「2000年キャンペーン」を打ち出した時は、OSGは多大な協力もした訳です。
また「ガスと水」の発想から岩村産業グループが水宅配をした時も、アドバイザーとして我々の水知識を提供する事にかなりのエネルギーをかけた事も周知の事実です。
この突然の取引中止で一番大事な事は、過去に販売したお客様へのカートリッジ交換をどうするのかという事。もしカートリッジの出荷を止めた場合、大変な問題が岩村産業に起こるのではないかと、誰が見ても「百害があって一利なし」の状況がこの「それはおかしな話だ」に全て集約されている訳です。

しかしながら「取引中止の原因となるOSG幹部が把握していないミスがあるのかもしれない」と、岩村産業のOSG担当役員に取引中止の事情を説明して欲しいと面会を求めました。
「OSGには全くミスはない」と担当役員は申し訳なさそうに回答し、むしろ岩村産業の身勝手な話であると付け加えました。「取引中止」についてその理由を質したところ、予想外の回答が返ってきました。
彼らの話によると岩村産業の実力会長が入会している経済懇談会の「一流会」に日本職販社の社長も入会しているとの事で、その中で出た話だという事です。岩村産業の社内でも多くの反対があったとの事ですが、そこはサラリーマン社会。実力会長の一言が大きな影響をもたらしました。東証一部の立派な会社であっても、中身は中小企業並みのお粗末な組織だと思いました。
岩村産業のOSG担当部長や役員は「ただただ申し訳ない」と、私達も親しくして頂いた部長達を困らせる事をしたくないので、取引中止を受け入れる方向で最後に大事な事を確認しました。
「取引中止というならば、カートリッジの出荷停止も仕方ない事ですね」
その言葉で彼らは初めて、カートリッジの存在を理解したのです。なんという顧客不在の会社なのかと、正直あきれ返りました。
「岩村産業の販売店とは直接取引をし、カートリッジ交換は従来通り、継続して欲しい」
販売店様とOSG担当者とは常に付き合っていますので、実務的にはカートリッジ供給でお客様には迷惑をかける事はありませんでしたが、製品の継続はなくなったのです。
今回の「取引中止」は納得がいかないと殆どの販売店様は反対でした。

あれから2年が過ぎ、日本職販社と岩村産業の取引は殆ど終わったと聞いています。
そしてOSGはどうなったか。岩村産業抜きで直接販売店様と取引を現在も継続しています。
しかし、この話はここで終わった訳ではありません。この出来事が後々、大きな問題になる事を日本職販社もわかっていなかったと思います。

溝端社長の立場を考えると、湯川社長時代に都市ガス・LPガス問わず「ガスと水」の文化を構築したのに、自分の代で最大手の岩村産業との取引中止になる事は無念以外の何ものでもなかっただろうと思います。この「取引中止」を演出した日本職販社に対して、どこかで決着をつけなければいけないと思ったのでしょう。いわゆる「喧嘩の落とし前」です。

4年後の12年5月、OSGグループにOSGコミュニケーションズが誕生するきっかけになるとは、その時は誰も想像出来なかった事です。偶然にも日本職販社の元取締役が溝端社長に直接通信機器の売り込みに来ました。どうして日本職販社のライバルであるOSGに、しかも元取締役の立場にいた人が売り込みに来たかは定かではありません。この時の話の流れから日本職販社のビジネスモデルをOSGに導入すればどうかという話に展開しました。本来であればそのような提案は断っていた筈のものです。OSGは、同業者にも「商道徳」ともいうべき一定のルールがあると考えて、今日までビジネス社会で生きて来ました。しかしこの同業者の一定のルールを破ったのは、4年前の日本職販社側にあった訳です。この提案に対して「積極的に研究する」事になりました。今から数年前の流行語にもなった池井戸潤の「やられたらやり返す。倍返しだ」というまさに半沢直樹の気持ちです。

追記
岩村産業の役員が「ココだけの話」として「OSGとの取引中止」の要因の1つに、粟山氏の存在が影響していると話してくれました。
そうです。あのウォーターネット創業時に岩村産業から来た粟山氏です。
スター社長の石塚氏や藤本塾長を引き連れてウォーターネットから出たあの粟山氏です。

役員の話によると、岩村産業は子会社の岩村運送の粟山社長時代に水宅配ビジネスに目をつけた事で実力会長と対立し、その後解任。解任された粟山氏の次の就職先がウォーターネットであった事から、実力会長はウォーターネットの親会社であるOSGの存在が面白くなかったとの事でした。なんともはや、稚拙な話です。

ちなみに実力会長と私の両家の墓地は同じです。墓地管理事務所の話によると「両家だけがお墓の花を切らさないようにと年間契約をされています」とのご縁から、実力会長とは親しく話をした事もあります。まさかあの実力会長がそのような器の小さな方だとは、役員の話を俄かに信じられないですが、もしそれが本当ならば大変なとばっちりを受けた訳です。 本当に世の中は「人間」が動かしているのですね。

次回から久しぶりに水宅配ビジネス、08年当時のウォーターネットについてお話します。


(次回に続く)

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