代表取締役 湯川 剛

結局この日は日没になるまで、あの5坪の事務所には帰らなかった。というより、帰れなかった訳です。自慢たらしくしゃべっていた1週間を悔やみました。みんなが黙って聞いていてくれたのは、何よりも「実績」をバックに話していたからであり、それが惨憺たる結果で終わって帰るのですから袋叩きにあっても仕方のないところです。所詮、分かってしまう事だと、意を決して帰りました。思いっきりドアを開けて、「ただいま!!」に朗報を待つ社員さん達は一斉に私の顔を見た場面は、今もはっきりと覚えています。

「自社ビルを建てるぞ」が、ドアを開けながらの第一声でした。まさか自社ビルを建てる位の大きな契約を貰った訳ではない事くらい、社員さん達は分かっていましたが、でも結果的には嬉しい出来事なんだなと思ったようです。でもそんな気持ちも状況説明で吹っ飛んでしまいました。

「だから自社ビルを建てて、この悔しさを跳ね返す」と1人熱弁を振るっても、社員さん達は白けていました。「大きな部屋に移るぞ」の方が現実的で、燃えてくれたかも知れませんが、幾らなんでも「自社ビル」なんて突飛な話で非現実的な話でした。言っている私ですら、何を根拠に話しているのか分かりませんでしたが、この悔しさや恥ずかしさはそれ位、大きなところに持っていかなければ収まりがつかなかったのでしょう。

現在OSGが取り組んでいる中期目標は、第6次4ヵ年計画(2006年2月〜2010年1月)ですが、この「自社ビルを建てるぞ」が、第1次7ヵ年計画(1973年10月〜1980年8月)であり、中期目標の始まりでした。何故7年かという根拠は、特別にありませんでしたが10年という区切りで言った訳です。落ち着いて考えてみれば「ヒトなし・カネなし・モノなし・実績なし」でスタートした私には「7年かかって自社ビル」など出来る筈はないのですが、その当時はそんな事は考えもせず、ただ「やる」の気持ちがあったのでしょう。そしてそれが実現するなど、誰ひとり信じている者はいませんでした。私を含めて・・・。

(次回に続く)

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