代表取締役 湯川 剛

JF社の水宅配事業のテスト販売が開始されて、3週間目の09年2月末に不具合が発生しました。これにより水宅配事業が前に進まなくなりました。
事前の予定では3月3日14時過ぎに、JF社と証券会社とWNでの3社協議をする事になっていましたが、テスト販売は中止し資本提携も見送る事になりました。
16時に本来であればテスト販売の中間会議を開催する予定でしたが、不具合発生による謝罪の場と一変しました。まさかの急展開です。
私は残念な気持ちもありましたが、何より本所社長に対し、心から申し訳ない気持ちでいっぱいでした。本所社長がわざわざ千葉から大阪に来られ、今回のテスト販売まで漕ぎ着けた訳です。JF社の水宅配事業の参入に対して、OSGのミスによって実現出来ない事態になった訳です。
私にとっても、伊藤忠商事系企業との業務提携が、このまま終わってしまうのかと思うと、残念な気持ちでした。その代償は決して小さくはありませんでした。

3社協議を終えた私は16時に会議室に入りました。あの時の光景は今も鮮明に覚えています。
会議室の照明は実際のところ明るかったかもしれませんが、私の感覚では薄暗く感じました。私の気持ちがそうだったのでしょう。出席者は12名。私を待ち構えるように座っておられました。
「この度は誠に申し訳ありませんでした」と切り出しました。たぶん私が話に費やした時間は10分にも満たなかったと思います。
「テスト販売は中止」は、あらかじめ司会者から参加者に告げられていました。
私の目から見れば、参加者の皆さん方の表情が何かホッと安堵したものに見えました。

謝罪を終えた私に対し、司会者の方が「元々この会議は2時間を取っていますので、もしよければ湯川社長の方から何かお話しすることはありますか」と促されました。私は既に販売中止なので特段お話しすることもなかったのですが、どういう訳か「では少し時間を頂きます」といいました。そして次の2点について話をしました。

1点は改めて水宅配ビジネスについて説明しました。不思議なことに「販売中止」と決まっているにも関わらず、私はこれから販売して貰うような気持ちで話しました。水宅配ビジネスの市場性や成長性、更に循環型社会における環境問題等の社会性についてお話をしました。同時にこのビジネスが単に水宅配ビジネスに留まらず「ONE to ONEビジネス」についてのマーケティングも説明しました。

そして2点目は、なぜ本所社長がJF社に水宅配ビジネスを導入しようとされたのかについての経過を改めて話をしました。
JF社は他社有名ブランドのOEM品を生産する、いわゆる縁の下の力持ちのような立場。
例え有名ブランドとはいえ他社製品を作っている事で、社員並びに従業員の皆さんが如何に誇りを持って貰うかと、本所社長が大阪で私に話された事を話しました。自分達が手掛けるブランド製品が欲しいという事が、今回の水宅配ビジネス参入の主旨だと改めて説明しました。

参加者の皆さんは神妙な面持ちで聞いておられました。予定時間になり、会議は終了しました。
「本所がやろうとした事が良くわかりました」と飛車角の一人である飯沢専務が私に声を掛けて来られました。しかし、決定された「中止」が覆される事はありませんでした。当然の事です。

会議室を出る時に「この後、若手幹部候補社員らと例のイタリアンレストランで食事をすることになっているんですが、湯川社長も是非参加して下さい」と誘われました。

(次回に続く)

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