代表取締役 湯川 剛

「中国で裁判を起こす!」
理不尽な天然社の対応にこのまま泣き寝入りをする訳にはいかない。
そのような決断をする前に情報を集めることにしました。裁判を起こせばどうなるか。

日系企業の経営者らと相談したところ、殆どの経営者は「余程事でない限り結果は厳しい」との事でした。より多くの情報を集めようと中国在住の日本人ネットワークをも紹介して貰いました。その結果、殆どが「時間の無駄」「費用の無駄」「こちらの言い分が通らない」そして「湯川さん、ここは日本でなく中国。すなわち法治国家でなく、人治国家です」と厳しい意見でした。そのような中で日本人が経営している「日本企業向けの訴訟に対してアドバイスをするA事務所」を紹介して貰いました。

そのA事務所とは、日本人経営者の妻が中国人であり、妻の父親が裁判長であるとの事です。仮にA社長とします。A社長によると「湯川さん、この中国では日本では考えられない事ですが・・・」と言って、次のような説明を受けました。
それは訴訟案件を直接担当している裁判長に弁護士らが裁判長の自宅訪問し、手心を加えて貰うとの事でした。日本では考えられない事であり、本当にこれがまかり通っているのかとにわかに信じ難い事でした。上海の一等地に事務所があり、私が訪ねた時も日系企業が相談していました。「郷に入っては郷に従えの考え方ですよ。湯川さん」
結果的にはこのA事務所とは契約を結ばなかったのは、自分自身が腑に落ちなかったからです。「人治国家」とはいえ、このような裁判長は極稀な事例であり、中国の全ての裁判長や裁判所はそうでないと思っています。
ちなみに当時から3~4年後の2013年に習近平主席が誕生し「トラも叩くがハエも叩く」と腐敗キャンペーンを展開するところを見れば、ありがちな話かもしれません。

A事務所の存在は、私に一種のカルチャーショックを与えました。「許せない天然社」の意欲が一瞬萎えるところもありました。「ここは中国だ」と何度も自問自答しました。
しかしこのままで放置する事は金銭的にも問題がありますが、それ以上に道義としてやはり許せない気持ちの方が勝っていました。

中国でこのような問題に相談するのはただ一人です。それは金鋭兄弟です。

金鋭が親しくしている弁護士を私に紹介してくれました。それが劉弁護士です。
彼は1970年4月29日生まれとの事で、OSGと同じ年齢でこの時、39歳でした。
精悍な顔つきと誠意ある人柄に私は「この人に賭けてみよう」と決めました。
事情を説明し「売掛金を回収したい」と言ったところ、劉弁護士は「その裁判を起こすには、その金額と同等の資産を裁判所に預けなければならない」との回答でした。

新たな課題が起こりました。

(次回に続く)

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