代表取締役 湯川 剛

私の生き方に時々自分自身でも疑問視する部分があります。
それが金鋭氏との対応に代表されています。
他人から見れば、完全な裏切り行為であり、二度と付き合わない事を体験させられても、私は「それはそれ」として人間関係だけは維持するところがあります。
例えば、創業当時にあれ程苦しみを受けた川上氏(第40回)であるが、困っていれば助けに行くようなところがあります。吉留氏(第5回・第13回・第408回)に対してもそうです。以前にもお話ししたようにこの2人が私に浄水器との出会いと営業とは何かを教えた人物だからです。その時の恩はどのような弊害を受けようが忘れてはいけない訳です。
今回の内容とは違いますが、入社して貰った社員さんが何かの理由で退職しても、OSGの出入りは自由であり、また退職後も連絡を取り合う場合があります。再度入社して貰った社員さんもたくさんいます。これは入社当時の気持ちに「恩」があるからです。「よくぞOSGに入社してくれた」という考えは、何十年経っても変わりません。

創業時5人で始めたこの会社に、6人目の社員さんが定着する事は夢のようでした。
ここに私の原風景があります。就職氷河時代と言われ、いわゆる買い手市場(この言葉は嫌いですが)とマスコミで言われた時でも、OSGに入社希望する学生さんには感謝の気持ちで接していました。採用人数の何十倍もの応募に対しては当然の事ながら、学生さんに断る訳ですが、それでも申し訳ない気持ちでいっぱいでした。

さて話は金鋭氏に戻ります。
このような考えの私ですので、金鋭氏に対しては特別な思いがあります。
金鋭氏によって異国の中国で分からない事で助けて貰った事も数多くあります。
天然社との合弁会社「天然三愛」が中国で初めての生産工場を設立しました。もし金鋭氏がいなければ生産工場設立に多くのエネルギーを掛けた事でしょう。全国300社の代理店があったお陰で、私は中国の隅々まで訪れる事が出来ました。多分、旅行者であれば行けなかった場所まで行きました。
例えば、中国国内で問題となっている少数民族のウルムチ地区の代理店での訪問も、日本からの観光ツアーにはない場所です。そのエリアを任されている天然社の代理店との出会いも、全て金鋭氏のお陰で知ることになり、OSG製品がそんな山間部にも売れていた訳です。そんな金鋭氏です。まして出会った時から「兄弟」と呼び合った訳です。いい時だけは「兄弟」であり、悪くなれば「二度と会わない」という生き方は私にはない訳です。

それにしても困ったものです。突然の珠海欧愛水基の閉鎖宣言です。
更に私を驚かせたのは、珠海欧愛水基での経費を全て請求してきた事です。しかも在庫支払いを人質にとっての対応です「これが中国人のやり方か」と短絡的に思ってはダメです。中国人にはその傾向はありますが、全ての中国人がそのような考え方ではありません。あくまでも兄弟金鋭氏個人の対応です。結果的にはそのすべての経費を私個人が負担しました。

【追記】
2012年8月10日。金鋭氏の茶室を出てホテルに戻りました。
その道すがら「金鋭氏とは二度とビジネスパートナーとしてはやらない。今後はプラライベートな人間関係として付き合っていく」と決めました。

2020年2月。あれから8年近くが過ぎました。二人は二度とビジネスパートナーとしての話はありません。金鋭氏からそれらしい話があっても私がやんわり避けていました。
この間、金鋭氏の子供を日本で預かる等、完全にプライペートな関係です。生涯の友です。

(次回に続く)

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