代表取締役 湯川 剛

【第405回:2人の「岩」】で紹介した山東省済南市の代理店 劉岩董事長が、尖閣諸島の日中問題をきっかけに反日体制を全面に出した経営方針を発表し、あわせて中国純国産主義を打ち出したとの情報が入りました。日本製品の追放と同時に純国産の育成といったところでしょうか。
中国通の人の話によると山東省は比較的男らしく愛国心が旺盛な土地柄だという事です。

劉岩氏は、この「人プラ」(「人生はプラス思考で歩きましょう!」の略)の中国関連の掲載においても多数登場する人物です。私が非常に関心を持っている中国人の1人です。
以下の文章は過去に掲載した内容を抜粋したもので改めて劉岩氏について説明します。
『山東省の省都に位置する済南代理店の劉 岩菫事長は、1973年3月21日、山東省生まれ。私とは26歳差なので、親子程の年齢差です。出会った03年当時は社員30名前後の代理店でした。非常に仕事熱心で、家庭の経済状況が豊かではなかった為に十二分な教育を受けていないようですが、その分非常に勉強熱心な男だという事は第301回にも書きました。自身の勉強熱心さは社員への教育熱にも通じ、OSG式社員教育に大変興味を示した為、私は経営理念の確立を始め、徹底的に済南代理店の社員教育に協力。
金鋭氏に育てられ済南市という地方都市の市場を貰い、代理店の董事長として奮闘していましたが、尊敬する金鋭氏が天然社から離脱。恩義ある金鋭氏が天然市場を荒らしている事に反発し、天然本社との取引にも見切りをつけ、独自の商品開発の道を選択した09年当時には既に200名を超える社員を有する程に成長。欧愛水基の新製品の総発売元に名乗りを上げてくれたのが、この山東省済南代理店劉 岩菫事長です。
現在は社員2000人を超える優良企業の董事長として、時々テレビ番組等にも登場する程の中国を代表する若手経営者になっています。(第400回)

そんな劉氏が打ち立てた「純国産化製品」の取り扱いと「反日体制」は別の見方をすれば、過去に販売した日本製品を排除するという事です。
彼の会社で日本製品を扱っていると言えば、OSG製品しかありません。
OSG製品を排除し、そして自ら中国製のアルカリイオン整水器の製造に取り掛かる。
うがった見方をすれば尖閣諸島日中問題をビジネスのチャンスと思ったのかもしれません。今まで「中国産アルカリイオン整水器はダメ。やはりアルカリイオン整水器発祥の地で安全で安心な日本製でなければダメ」をモットーに販売していた事をこの機に180度転換する経営戦略を取ったのでしょう。
一時は私と手を組んで欧愛水基製品の総発売元をやる予定であったところ、私が金鋭氏との提携に動いた事への反発も、その背景にはあったと思います。何より彼は反金鋭の急先鋒でしたので、私との見切りをつけたのでしょう。
かつての天然社時代の代理店仲間も多数いる為、中国全土のネットワークを利用し、中国国産のアルカリイオン整水器の販売拡大を狙ったのだろうと思います。その為の「純国産化製品」と「反日体制」の2枚カードを準備した訳です。
もし私が劉岩董事長と同じ年代であれば、同じような戦略を考えたかもしれません。
よく有りがちな話です。「気を見て敏なり」の行動を取ったのでしょう。
更に彼が取った「純国産製品」の販売方法は驚くものでした。
純国産製品の「保証期間10年」を打ち出しました。10年間、製品の不具合があれば、全て無償交換するというのです。
10年間保証する事に対し、十二分な裏付けを取ることなく検討もしない状態で発表した事に私は驚くばかりでした。
これが中国式なのかもしれませんが、日本人にはなかなか出来ない荒業です。
聞くところによると自前の生産工場を設立した訳ではなく、アウトソーシング方式の委託生産でした。となると「10年保証」は受託生産工場にとってかなりの負担がかかる事は目に見えて明らかです。何故ならば中国製品に不具合が多発する為、日本製品を求めてきた訳です。アルカリイオン整水器の発祥の地である日本には長い歴史があって現在の製品が出来ている訳です。単なる真似事で製品が出来るものではありません。

当時39歳の青年経営者、劉岩董事長は尖閣諸島による日中問題を中国社会の「風」と読み取り、経営の舵取りを日本製品から中国製品へ切り替えたのも理解しなくもない事です。
アルカリイオン整水器の販売のいろはを手取り足取り教え、更に経営に対するアドバイスをした彼は「もはや湯川から学ぶものはなし」と私との決別を決めた事でしょう。

 

【後記】 2020年の年賀状には「TOKYO2020 OSG2020」を見出しに創立50周年に東京オリンピック・パラリンピックが開催される内容が書いてありました。
1月決算のOSGは、例年2月の第1土曜・日曜日に約100名以上の管理職が集まって、新年度の予算や意思統一等を図る行事が行われます。
今年は2月1日が土曜日でした。本来なら50周年をオリンピック・パラリンピックの観戦チケットも準備し、多くの取引先様と50周年の販売促進をする予定でした。

ところが「新型コロナウィルス」ショックによってこの企画は吹っ飛んでしまいました。
取引先様方に「社長、弊社は今年、創立50周年です。この記念すべき年に販売促進企画をよろしくお願いします」等、言っておられません。

「今年は大きな節目の50周年。年賀状に『TOKYO2020はOSGの2020』とうたった。しかし時間をかけて準備した企画が新型コロナウィルスショックで吹っ飛んでしまう程、OSGの50周年は手荒く迎えられた。それならそれでいい。むしろOSGらしい50周年の開幕だ。この新型コロナウィルスショックを言い訳にせず、この50周年を見事にやり切ろう」2月1日、私はこのように管理職の皆さんに挨拶しました。

本来ならば、2月1日付けか10日・20日の「人プラ」の【後記】に本日の事を掲載すればよかったのですが、2月1日以降、私は東奔西走にてこの「新型コロナ」対策で走り回っていました。少し落ち着いたところで本日3月20日にこの文章を掲載しています。

世の中はマスクと消毒液不足。それに便乗したのかトイレットペーパーも不足しているとの事です。ドラッグストアにはマスクや消毒液を入手する為に長蛇の列を目にします。
ある政治家が「この事態は国難である」と発言したように世界中を震撼させた新型コロナウィルスの感染は多くの国々の国民を不安にさせ、その不安が株式市場の大暴落を始め経済をも混乱させている状態です。
日本では小中高公立校一斉休校や集会の自粛等、街から人々が消えた感じです。

そんな状況の中で「私達OSGは何ができるのか」を幹部や管理職で話し合いました。
「50周年という大きな節目にこの巡り合わせは何かしら1つの使命がある」
「もしOSGがマスクを作っているならマスク不足を解消したいが私達にはそれは出来ない。しかし消毒液の不足は私達の手で少しは解消できる。まずOSGの浄水器等を使って頂いているお客様にカートリッジ交換の際に除菌水の無料配布を行おう」と決断しました。

新型コロナ問題の恐ろしいのは、終息が見えない事です。どこまでこの状態が続くのかが読めないどころが、毎日感染者数が報告されます。無料配布対象としているOSGのお客様は何万人とおられます。「除菌水の無料配布」は間違いなく、OSGの経営や収益的にも大きな打撃を与えます。加えて事態終息の期限が見えないのです。しかし私達は決断しました。
これが創立50周年の使命だと思いました。
OSGの株主様にご迷惑をかける訳にはいかないので、収益の穴埋め策として11月に開催予定の創立50周年記念式典を「縮小」、場合によっては「開催中止」する事もやむを得ない処置だと思います。

かつて阪神淡路大震災や東日本大震災の時に浄水器が使えなくなったお客様への無料交換(第157回・第416回)等、「私達が出来る事」に対して行動を起こした経験があります。
その為にも本来のOSGビジネスはそれ以上の成果を挙げなくてはなりません。
OSGの社員さん達はそれを理解してくれています。
毎日、報告されるお客様からの感謝の言葉に私達は励まされ、この新型コロナ問題に打ち勝つことが創立50周年の使命と目的だと、改めて感じました。

(次回に続く)

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