代表取締役 湯川 剛

私とは親子程違う26歳差の劉岩董事長。当時(2012年)私が65歳で劉岩董事長は39歳。
彼は尖閣諸島による日中問題を中国社会の「風」と読み取り、経営の舵取りを日本製品から中国製品へ切り替えた事は理解しなくもない事です。
劉董事長にはアルカリイオン整水器販売のいろはを手取り足取り教え、更に経営に対するアドバイスもした間柄ではありましたが、この時「もはや湯川から学ぶものはなし」と私との決別「親離れ」を決めた事でしょう。

ところが不思議な事に私は劉岩董事長に対して反感や警戒を持つどころか、むしろ彼が取った経営手腕に対して興味を持ちました。私の心の片隅には彼の成功を祈る感情が存在し、それはまるで父親に反発し独自の道を歩もうとする息子を応援するような気持ちそのものでした。彼の成功を祈ると同時に心配もありました。それは彼が「反日」を全面に打ち出したという危うい側面に対してでした。

「劉さんが反日を全面的に打ち出したことは残念だ。若い劉さんはこれからもグローバルな人材でなくてはならない。その為にも今後日本から学ぶ事も多くある。まして今後ともアルカリイオン整水器を販売するなら日本の情報は必要不可欠です。一時の政治問題に心動かされて反日等、声高に言うと日本にも来られなくなる。私との関係は別として、そこが心配だ」
私は欧愛水基の社員さんにそう伝えました。
彼は過去、プライベートも含め何度も来日経験があり、日本からいろいろなものを吸収しようという姿勢の持ち主だっただけに余計に心配でした。
心の底からこの若き経営者が好きだったのでしょう。この会社が拡大する根幹に「OSGの教育」が浸透している事がその要因だったかもしれません。

日増しに拡大する反日運動。中国に進出した03年から12年までの10年間でこれ程の反日運動は初めての経験でした。大規模なデモが各地で勃発。靖国問題や教科書問題ではここまで拡大しません。尖閣諸島問題は国家の根幹に関わる「領土問題」だからです。
日系企業や工場、日式レストランが焼き討ちにあい、中国国内では日本語を発する事に非常に気を使わなければならない状況でした。欧愛水基の中国人社員さんにおいても、「日系企業で仕事をしていて大丈夫か」と親族が心配したといいます。まさに「中国リスク」です。
20年前ならコンサルタント会社が「如何に中国に進出するか」がビジネスセミナーの中心でした。しかしこの時は「如何に中国から撤退するか」というテーマでコンサルタント会社や証券会社・銀行がセミナーを主催していました。

9月11日、「国有化」への動きに伴って勃発した尖閣諸島日中問題。
珠海欧愛水基の閉鎖に伴い、欧愛水基は製販一体化した事を表明すべく事業説明会を開催したのが9月19日。
そして、日中間を取り巻く「風」を読み、中国純国産製品の販売と反日体制による日本製品の排除を全面に押し出す経営方針を表明した劉岩董事長。

こうして更に悪化する中国を取り巻くビジネス環境。
さぁ!どうなるのか。
ビジネス小説なら面白いところですが、リアルなビジネス社会ではそうも言っておられません。

 

【後記】
「安倍総理が2月27日に新型コロナウイルス感染症対策本部で、全国の小中学校と高校、特別支援学校に臨時休校を要請する考えを表明」のニュースを見ました。
翌日の28日16時に緊急役員会議を招集しました。内容は「OSGの社員さんやパートさんのお子さんが臨時休校になる。子供達の食事等の準備で会社を休むかもしれないが、OSGとしては積極的に協力する。この事を社長メッセージとして発表し、社員さんパートさんに安心して貰えるようにして下さい」
ここで役員達に改めて「OSG50年分の成果を発揮する。こんな時こそプラス思考で行なう」と伝えました。同時に「OSGコロナウィルス感染症対策本部」を設立しました。

幸いOSGは自社製品群の中で殺菌水・除菌水等の生成機器を取り扱っています。
そこでまずは販売向けではなく、OSG製品ユーザーへの「無料配布」分の除菌水を優先的確保に動きました。その為には生産(製造)・営業・管理にて一元管理出来る環境を整える必要が生じました。生産された除菌水が、「顧客無料配布分」が優先的に確保されるよう、また営業での受注分が調整されるよう、管理本部にてそれらの欠品・遅配が起こらないよう体制を整える事になりました。その「生産(製造)・営業・管理」の3本部を司る対策本部長に溝端社長が就任しました。

「生産(製造)本部・営業本部・管理本部」で構成される「OSGコロナウィルス感染症対策本部」は、何か堅いイメージがあるので私は「社内用語としていい名称はないか」と前向きに積極的に取り組めるよう名称をその会合で募りました。いろいろな名称が出てきましたが、ある若い管理者が「3つの頭(3本部の意味)を持つキングギドラはどうですか」との提案がありまひた。私は「キングギドラ」がどんなものなのか、分かりませんでしたが、強そうな名前なのですかさず「それでいこう」と決めました。
コロナ獣に対決するには、これ位の怪獣を用意しなきゃならないだろうと思ったのです。
社外的には「OSGコロナウィルス感染症対策本部」、社内的には「キングギドラ本部」が設立されました。

人類が初めて闘う目に見えない新型コロナウィルスに打ち勝つには、このギングギドラの活躍を創立50周年の使命にしたいと思います。

負けないぞ!
頑張れ、キングギドラ。

(次回に続く)

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