代表取締役 湯川 剛

2013年から何年か遡ります。
中国の協力関係企業で欧愛水基の工場オーナーである蔡社長が来日しました。
その日はたまたま全国拠点長会議で、約100人の管理職にスピーチをお願いしました。
彼女はその席上で「湯川会長。OSGには女性の管理職が誰もいない」とたどたどしい日本語ながら、キツい指摘を受けました。今もその場面は、はっきりと覚えています。
この「人プラ」の中国進出において蔡社長は時々登場します。彼女は英語も堪能で女性ながら世界を相手にビジネスを展開しご主人は工場長を担当しています。私が大好きな二人です。以前にも「人プラ」で紹介しましたが台湾から中国に渡り、プラスチック成型工場を経営。私と最初にあった時は貸工場からスタートでしたが、今や広大な工場を所有し、私が中国進出時に快く工場の一部を貸してくれました。
私より2回り程違う2人ですので息子や娘のようです。

「OSGには女性管理職がいない」と指摘されたその時からずっと、私の心の中で一つの課題になっていました。中国欧愛水基では日本の取締役にあたる董事に財務責任者の女性役員はいましたが、日本では課長クラスまででした。改めてOSGは「男性路線」で来たのだと認識しました。決して女性社員の幹部登用を否定している訳でもなく、自然とそのような形になってしまったのでしょう。この年の13年4月からはWN社の社長をバトンタッチした事で多少の時間が作れる事から心の中に引っかかっていた「女性の幹部登用」を勉強する事になりました。

「想いは状況を引き寄せる」とよく言いますがそんな折、2つの業界から声がかかりました。
1つが料理教室です。関西電力の関連系列の料理教室でしたが、東日本大震災をきっかけにその料理教室を譲渡したいとの事です。当時「イケメンシェフ」という言葉がマスコミ等で使われていましたが、この「イケメンシェフ」の商標権もこの料理教室が所有していました。

今まで経験した事のない分野なので、たとえ1店でもいきなりOSGが運営する事はリスクがあり、とりあえず私の私財で行なう事になりました。以前より私はレストランや料理店でおいしい料理を出したとしても厨房で水道水を使っていると私的にはこの店は「アウト」です。私は料理においては「水も食材である」という考えです。ましてお客様からお金を頂いているプロのお店では、当然の事だと思っています。ちなみに有名なレストランや料理店・ホテルではOSGの業務用アルカリイオン整水器等を使って頂いています。
そのような関係から料理教室の運営が全くOSGビジネスと無関係ではありません。

この料理教室の話を持ってきた支配人は男性ですが、運営は殆どが女性です。教える先生もレシピを考えるスタッフも女性です。そのような意味で女性管理職について勉強になると思っていたのですが、結局私は男性支配人としか打ち合わせをしていません。
その内、私自身も忙しくなり年に1~2度しか料理教室に顔を出さなくなりました。
そんな私ですが女性の能力に対しては、改めて学ぶところが沢山ありました。男性にはない女性の繊細なモノの見方や感性は凄いものがありますが、更に「頑張る」や「責任感」は性別に関係なくあるのは当然の事です。
この事をある人に話すと「湯川さん、それは男性や女性ではなく、その人達が凄いのです。女性の中には無責任な仕事をする人もいます。それは男性でも同じです。だから余り女性だからと思わない方がいい」と助言も受けました。

たしか毛沢東の言葉だったと思いますが「天は男と女で支えている」という言葉があります。
女性の戦力化が成功すればOSGは新たな潜在能力を発揮するのではないかと思います。

この年、私はメーキャップ関係の会社にも関わりました。経営者は男性ですが料理教室と同じように会社のスタッフは殆どが女性でした。以前「OSGは男の軍団」と言われていた時もありますが、私から見ればこの美容関係の会社は対極的な職場でした。女性の営業本部長をはじめ、部長職は殆ど女性でした。「営業本部長」という肩書から男性らしい女性が登場するのかと思いきや、私が想像する以上に女性らしく振舞いながら、しかしOSGの男性管理職の人達よりもタフさがありました。そういう人たちは皆魅力的な人達ですが、これも先程の助言通り「男性・女性」ではなく「その人の魅力」となります。その美容・メーキャップ関係の男性社長も「別に男性だから、女性だからとは余り意識をしたことがない」との事でしたが、ある時「でも湯川会長、やはり女性は男性と違ったところで気を使います」ともらしていました。

蔡社長の指摘、2013年の経験が後々OSGの女性幹部登用につながっていく訳です。

私がOSG社長に提案し翌14年に「Wの会」が誕生。WはWOMANの頭文字から取りました。
女性の活躍の場を女性の目から意見を述べて貰う等、私達男性が気づかない問題や視点をアドバイスして貰う為です。
OSGの女性社員さんの頑張りで16年3月には大阪市女性活躍リーディングカンパニー認証取得しました。また同年8月に「Wの会」を中心に「セクシュアルハラスメント防止に関するルールブック」を作成して貰いました。
更に13年から3年後の2016年にはOSGグループに女性社長が誕生します。グループの生産拠点という大変重要な生産工場の社長です。彼女の20年前は経理担当の女性事務員さんでした。経営者としても素晴らしい能力を発揮してくれています。

このように今後も益々女性の活躍の場が広がっていく事を期待しますが、そのスタートが13年の料理教室や美容メーキャップ会社の出会いであり、そもそも蔡社長の指摘から始まった事です。

 

【追記】
2020年春。新型コロナショックの年ですが、OSG創立50周年の年に女性の次長職が3人誕生しました。私は彼女らに「大変な時期に重責な職を就任してご苦労様。それはそうとまずは部次長らしい制服から変えられたらどうでしょうか」と伝えました。彼女らも私の提案に笑顔を見せて「わかりました」。男性社員にはそのような提案はしません。(笑)

(次回に続く)

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