漢寛平董事長との面談から1か月後の13年12月21日。
私は彼が経営する江蘇省揚州にある本社に行きました。
揚州は、鑑真和上の生誕地としてとても有名なところです。
一般的に「食事をしましょう」と言われれば、レストランでの会食を想像すると思います。それは初訪中から10年以上、中国で数百回も会食経験がある私も同じです。時には自宅に招待される場合もありますが、それも10年の間で数回程度の事です。
ところが漢寛平董事長が指定した会食場所は、なんと会社の幹部用の社員食堂でした。
私は大変気に入りました。面子を気にする中国において、素のままを出される董事長の人柄に引き付けられました。ただ気になったのは、本人が参加しなかった事でした。
「忙しいのだろう」という事で、むしろ幹部の人間観察や人物評価をする機会が得られたと、あまり気にする事はありませんでした。
翌日22日にOSGと家電量販店との間で商品取引に関する調印式が行われました。
その後、店内を見学しました。私が知っている中国の百貨店や家電量販店から比べると、店内はそれ程新しく感じませんでした。「やはり地方だからかな?」と理解していました。
また短期間に出店した事で、改装する資金や時間に余裕がなかったのかもしれません。
調印後「午後から全体勉強会を開催したい。突然だがやって貰えるか」と言われ、私も折角来たのだから「是非」との事で、約60人の管理職の前で話す機会を得ました。
勉強会後「次回はより多くの社員にもお願いしたい」と依頼され、翌年1月3日に再訪問する事が決まりました。中国のお正月は旧暦ですので、日本のお正月休みは関係ありません。
2014年、新年を迎えた私は1月3日に上海経由で揚州に入りました。
ホテルにチェックイン後、慌ただしく家電量販店の本社会議室に移動しました。
前回より参加者が倍近くに増え、100名程が待機していました。参加者の殆どは本社の管理職や店長等です。勉強の内容は主に「物の見方、考え方」を中心に行ないました。
簡単に説明すると「プラス思考で物事を見るか、それともネガティブに物事を捉えるか」についてです。部下を持つ上司ならばこのプラス思考かマイナス思考かによって、与える影響が180度変わってきます。前回の幹部勉強会が良かったという事でのリクエストでした。
このような内容はたぶん中国でも行なっていると思っていましたが、私がやると「日本の社員教育」とでも思っているのでしょうか。それとも意外とこのようなジャンルの社員教育はないのかもしれません。
「心が全てを生み出す源である」という原理原則は、古今東西同じなようです。
実はこのような話は台湾企業や韓国企業でも社員教育として行なった経験があります。
最近ではインドの若い社員さん達に話しましたが、涙を流して聞いていた人もいます。
私が用いる教材に下記のような内容があります。
「遊んでいる時の運動場は狭いなぁ。ゴミ拾いをしている時の運動場は広いな」
これはある子供の新聞投稿からの引用なのですが、なかなか的を得た話です。子供の目から見れば、思いっきり遊んでいる時は狭くて仕方がない運動場でも、ゴミ拾いとなると広すぎる。その時々で運動場が広くなり、狭くなる訳ではないのにそう感じるのです。
まさに「心が全てを生み出す源」。国が違い、言葉が直接通じなくとも理解して貰えます。
また「心の傾向性」についても同様です。
私達は日頃から物事を判断する時、その人の心の傾向性が如実に表れます。
常にポジティブで前向きに受け止める人は、例えピンチな状況であってもそれを教材としてプラス的に受け止めます。またその逆も然り。いわゆる「不幸体質人間」ともいうべきなのかもしれませんが「自分は不幸だ」と思い込む傾向性があり、自分より不幸な人を見る事で安心感を得、時には優越感を感じる場合があるようです。より不幸な人に近づこうとする傾向があるのが特徴的です。成績が悪いお店の店長は、成績の良い店長とはあまり連絡を取りません。むしろ赤字の店長と連絡をし、妙に落ち着く傾向があります。同質の人同士は、引き付け合うのです。
勉強会終了後、幹部社員が「勉強会でされた例え話は、社内でも見かける現象だ」と私に伝えてくれました。この話は韓国でもアメリカでも同じ現象が見られ、共感されました。
この内容はOSGの社員教育の一つである「明るさの磁場経営」の中にあります。
こうして管理職向けに開催した勉強会も無事終わりました。
日本では約2時間コース、時には1部・2部と分かれ4時間程掛かるプログラムですが、通訳を交えての勉強会ですからその倍近く掛かります。
夕方をすぎた頃、勉強会が終わりました。この時も漢寛平董事長は不在で、幹部が対応してくれました。幹部の話によると「董事長は今後も引き続き、社員教育を行なって欲しいとの意向」との事でした。更に「近々この家電量販店は『社員教育幹部学校』を開業するのでそこの校長に就任して欲しい」という要請もありました。中国らしいと言え、そのスピードは「特急」どころか「超特急」の動きです。私にもスケジュールがあり、即答はしませんでしたが、まずは本来の商品の取引で、その家電量販店を見極めたいと思いました。
(次回に続く)
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