代表取締役 湯川 剛

相手側にどのような思惑があるのかは分かりませんが、それによって人を傷つけるような行為は絶対に許せないと思いました。特に猪木氏の側近は過去に、このような事を繰り返していました。当時のIGF社長、現在の青木社長の前任であったA社長もその被害者の一人です。
猪木氏の側近が「A社長が1億円を使い込んだ」と周囲に言いふらされていました。
「湯川会長、私は悔しくて堪らない。側近がIGFを財布代わりのように無尽蔵に経費を使う為、それを咎めた瞬間から全く身に覚えのない事実無根の使い込みの噂をあちこちに言いふらされる始末。もう、私はやってられない」そう言って辞表を提出されました。
「何もしていないのなら辞めてはいけない」と説得したのですが思い留まらせる事は出来ませんでした。

実は、A社長が就任以前にもB副社長が側近と喧嘩した事が引き金となって、同様にあちこちに「B副社長がお金を使い込んでいる」と、辞任に追い込んだ経緯もあり、この他にも、猪木議員のC秘書も同じような手法で側近から解任されていました。
また猪木氏と誕生日が同じという事で非常に可愛がられたD氏は、北朝鮮等にも同行する位の間柄にも関わらず、猪木氏に頼まれたボランティア活動の募金をやはり側近がごまかした等で離れていったのもこの時期でした。側近に何があったのでしょうか。
側近のやり方は当時、周辺でも有名な話でした。いずれにしろ、私は側近の人に対する嫌がらせ等をつぶさに見ていました。その結果、多くのアントニオ猪木支持者が離れていった事も事実です。猪木氏自身がその事で悩んで私に相談をしていた事もありましたが、だからと言って黙認し、その多くの人々は「泣き寝入り」をしていました。

今回の件も全ては側近からの話に猪木チームが更に盛ったのでしょう。
しかしまさか次の標的に私がされるとはゆめゆめ思ってもみませんでした。
ここで今までの繰り返しと同じように「泣き寝入り」をする事は、猪木氏自身にとっても決していいことではありません。
少し大げさな言葉ですが、過去に泣き寝入りした多くの離れて行った人たちの分まで闘おうと思いました。そう思うと今回の問題が前向きな気持ちで取り組むことになりました。後で述べますが私をサポートしてくれる弁護士の各先生方に
『世界で闘ってきたあのアントニオ猪木から、もしかすれば最後の闘いの指名を受けた相手がこの自分だと解釈して、彼の言葉を借りれば私の「闘魂に点火した」という訳です。相手に失礼のないように全力で闘って下さい』と、よく冗談話をしました。

威勢のいい話はしたものの「よし、臨時株主総会で理不尽な役員解雇は阻止。取り巻き連中の役員就任も阻止」とはいえ、圧倒的に株主数では猪木チームが有利でした。
IGFの株主は私も含めて猪木氏の関係者ばかりです。簡単に言えば「アントニオ猪木ファン」です。このような状況の中で臨時株主総会まで、2~3か月あったと思います。
何としても他の株主の協力が必要になりました。

IGFの株主は有名な焼酎メーカーやテレビCMでお馴染みの学習塾に、レンタル業などそうそうたる会社の社長が株主でした。その株主らとの面談を求め、経緯を説明しました。「猪木サイドのやる事だね」と言ってIGF側に賛同しますという声も頂きました。
逆に「現役員を辞任させ、自らが役員に入る」という猪木チームの中に株主もいて当然ながら拒否されました。
中には、この際に「株の売却」を考えていた株主はIGFサイドに付いた方がいいのか、それとも猪木サイドに株の購入を持ち掛けた方が高く購入してくれるのかというコウモリ型の計算高い株主もいました。

IGFサイドも動き出しました。猪木氏の個人弁護士であった前々回登場の丸の内先生のアドバイスで第三者の弁護士及び公認会計士が社内調査をする事になりました。勿論、私自身の事も含めてです。何とその結果、猪木氏及びその側近が多額な私的流用をしていたという回答報告書が出ました。
このあたりからメディアを使っての双方の泥仕合は、当時のマスコミの「ネタ」になっていました。その内に猪木氏もTwitterや記者会見で「IGFは整理する」発言がスポーツ紙にデカデカと取り上げられました。対決図式はIGF役員 VS アントニオ猪木、及び猪木チームの非難合戦です。

さて側近と取り巻き連中という言葉に品がなければ「四人組」と言い換えてもいいですが、「猪木チーム」と表現したいと思います。
ちなみに臨時株主総会の相手側からの議案議案は「IGF役員全員の解任」と「猪木チームメンバーの役員就任」との事でした。「なるほど、そういう事か!」

株主争奪戦も結果的には、猪木サイドが圧倒的有利なままで、臨時株主総会の日が迫っていました。これだけはどうする事も出来ません。

「思いつくことは全てやったが無理だった」や「今更何をやっても意味がない」など絶望的である状況を伝える“ことわざ”に「万事休す」という言葉がありますが、文字通り「万事休す」の状態で臨時株主総会を迎える事になりました。

「臨時株主総会」戦での闘いのゴングが鳴った瞬間、アントニオ猪木の得意技「延髄切り」の秒殺でIGF役員サイドは倒れるのか。

さて、どうなるのか。

【追記】
前回も掲載しましたが、3月2日にNHK総合番組でアントニオ猪木氏の闘病生活に密着したドキュメンタリー番組『燃える闘魂 ラストスタンド~アントニオ猪木 病床からのメッセージ~』が放送されました。
今回の文章の中に『世界で闘ってきたあのアントニオ猪木から、もしかすれば最後の闘いの指名を受けた相手がこの自分だと解釈して、彼の言葉を借りれば私の「闘魂に点火した」という訳です。相手に失礼のないように全力で闘って下さい』と掲載しましたが、とんでもない話です。
アントニオ猪木がまさに全身全霊で闘っている最後の相手は「心アミロイドーシス」という病魔です。必ず乗り切ってくれるでしょう。それはアントニオ猪木だからです。

(次回に続く)

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