代表取締役 湯川 剛

在日中国人の皆さんをプロレス会場に招待しました。この日、後楽園ホールには50名程の中国人観戦者が来てくれました。
さて、中国人はプロレスを受け入れてくれるのか。それとも受け入れないのか。

結果的には予想通り、大いに盛り上がりました。中国人レスラーの登場は、当然、大盛り上がりでしたが、日本人レスラーに対しても同様です。
やはり予想通り中国人は格闘技を観るのが好きな事が分かりました。
会場では、日本人の観客からは聞かれないような声援が響きました。
「中国人、加油!」「中国人、加油!」
まるでオリンピック競技の応援のように中国語で「中国人がんばれ」「中国人がんばれ」という声援です。同じ会場にいた日本人の観戦者もその声に笑っていました。私が中国人を好きな部分と言えばこの素朴なところです。別の見方をすれば周囲を気にしない態度で、これが日本人から見れば横柄な態度に映り、それが度を超すと私も嫌いな中国人です。
会場では在日中国人なので周囲の日本人に配慮しながら、中国人レスラーや日本人レスラーに「中国人、加油!」「日本人、加油!」と応援していました。
私も観客席から「中国人、加油!」「日本人、加油!」と声援を送りました。

そんな場面を目にすると「何としても中国でプロレスを開催したい」という強い気持ちが湧いてきました。「若い中国人レスラーに思いっきり故郷中国で中国人観戦者を会場いっぱいに入れて試合をさせてあげたい」と感じさせる場面でした。「アウェー」の日本ではなく、中国の「ホーム」で試合をさせてあげたい心境です。

2013年に上海でプロレス興行を開催したと言いましたが、この時の試合は日本人選手と欧米選手の対戦カードでした。その同じリングで「私達の国の中国人レスラーが頑張っている」となれば、会場は大盛り上がりだと確信していました。そんな「夢」実現に向け、私は早速、中国人関係者にその夢や目標を語りました。
試合会場を所有する企業や関係当局に企画書を作り、何度も足を運びました。日本なら何の弊害もないプロレス興行ですが、ここは中国です。

私は中国に10年以上、ビジネスで「中国」と向かい合いました。いろいろ弊害や壁にぶつかる度に、中国は「共産主義国家」であるという事をまざまざと肌で感じました。
中国のビジネス社会では「出来る事」を「出来ない」といいます。そして「出来ない事」を「出来る」という場面を嫌というほど経験しました。すなわち「出来る事」を「出来ない」と言って賄賂を要求するのです。また「出来ない事」を「何とか出来るようにしましょう」と言って同じくアンダーテーブル、すなわち賄賂を要求されます。この社会風潮に対し習近平主席が「賄賂撲滅運動」を取り上げ、報道で汚職で逮捕される大物政治家等が連日大々的に取り上げられていますが、現実には「ビジネスの現場」では相変わらず「賄賂体質」がはびこっています。習近平主席が「トラも叩くがハエも叩く」という有名な言葉がありますが、小さなハエは一向に消えません。私が中国人であれば、賄賂を要求された瞬間に当局へ訴えますが、日本人である私はそう簡単には出来ません。
そんな中国においては「郷に入っては郷に従え」の言葉通り、その異文化やカルチャーショックが受け入れられなければ中小企業のグローバル化は大変難しいです。

さて、話をプロレスに戻します。
特に当時は反日運動もありいろいろな大きな壁に阻まれて、一度は諦めていました。
少し大げさに表現すれば、3000年の歴史ある中国史上初の「中国人が中心となるプロレス興行」が果たして可能なのか。それとも無理なのか。それにしても、大きな目標には大きな弊害がつきものですが、その分、遣り甲斐もあります。今回の日本で在日中国人の皆さんが見せた熱狂ぶりを支えにするしかありません。

在日中国人の皆さんが受け入れてくれた「プロレス」をはたして本国の中国人民は認めてくれるのか。すなわち中国人はプロサッカーやプロ卓球のように「プロレス」の観客になり得るのかという事です。
そのような意味で、2017年は「中国プロレス興行元年」になります。
そんな大きな夢と目標を持って、私はあらゆる可能な限りの中国人ネットワークを使いました。

(次回に続く)

ご意見、ご感想は下記まで
support@osg-nandemonet.co.jp