代表取締役 湯川 剛

在日中国人の皆さんが受け入れてくれた「プロレス」をはたして本国の中国人民は認めてくれるのか。すなわち中国人はプロサッカーやプロ卓球のように「プロレス」の観客になり得るのかという事です。
私は可能な限りの中国人ネットワークを使いましたと、前回お伝えしました。
その結果、公安当局においては「入場料は取らない」事が条件に、興行を認めてもらう事になりました。
「入場料を取らない」という事は「収入ゼロ」と根本的に厳しい内容ですが、とりあえず一人でも多くの中国の人々にプロレスを見せたいという目標がそこにありました。
いずれにしても「入場料は取れない」・「会場費用はかかる」・「会場は満席にしたい」という3つの大きな壁を前に、当時はこの3つの課題を何度も頭の中で繰り返していました。
この問題を解決しない限り前には進められないという関係者もいましたが、私はやれるところから手を打っていこうと思いました。そうすれば何か解決の糸口が出てくるのではないか。課題があるから何もできないでは何事も始まらないのです。

そこで私はまず、「日本と中国でイベントを行なう」事にしました。特に日本では「中国人がプロレスをする」という事の弊害はない訳です。そこで在日中国人の皆さんだけの試合を開催する事を決めました。その会場を日中友好会館にしました。
私は8月25日、日中友好会館を訪ねました。水道橋にある後楽園ホールから飯田橋に向かって徒歩10分程の場所にあります。そこで担当者の方に事情を説明しました。「中国でプロレスを広めたい。その為には、まずは在日中国人の方々を一人でも多くプロレスを見せたい。しかも場所をこの日中友好会館でやりたい」大体そんな話でした。担当者の方は驚きました。それに相応しい会場はあるが、過去にプロレス会場にする事例はないとの事です。そこで日中友好会館の関係者を調べました。そうすると、与野党問わず政治家の皆さんの名前が連なっています。そこで在日中国人の方々に、反日であれ、日本のどの政治家であれば人気があるのか聞きました。そうすると総理経験者の政治家の名前が出てきました。当然その政治家も訪ね開催の協力をお願いしました。いろいろな課題はありましたが、そのひとつひとつをクリアし、11月16日、日中友好会館で中国人を中心としたプロレスを在日中国人が観戦する大会を開催する事を決めました。

次に私は上海で、中国初の中国人プロレス団体のメディア発表会を開催する事を企画しました。プロレス団体「東方英雄伝」です。その日を9月20日と決めました。
「入場料は取れない」・「会場費用はかかる」・「会場は満席にしたい」の3課題はありましたが、出来る事から動き出しました。
どこかで「何とかなるだろう」という一見無責任な考えに見えますが、私が嫌な事は『何か課題があるから「動けない」』という人がいますが、私から言えば「動けない」のではなく「動かない」という事です。動けば事態が変わる場合もあるのです。

こうして日本では「東方英雄伝」の旗揚げを11月16日に日中友好会館で行ない、中国では上海で9月20日に「東方英雄伝」のメディア発表会を開催する事を決めました。

そんな時に面白い話が飛び込んできました。
中国で大ヒットしている映画「戦狼」にある人物が出演しているという事です。

2017年当時、中国では中国映画市場最大のヒット作品「戦狼(ウルフ オブ ウォー)」が話題になりました。日本の大手新聞紙にもその記事が取り上げられていました。
2017年7月27日に本国で公開。中国とアジアの歴代興行収入1位を更新し、観客動員数は1.6億人を突破。世界歴代54位となる約1000億円の興行収入を記録。
監督兼主役は、呉 京(ウージン)。呉 京はこの映画で一躍英雄になりました。
映画の内容は「人民解放軍賞賛」の作品です。この映画以降、中国政府は「戦狼」戦略という用語を多用しています。この映画にロシア人役で名前を「熊」という俳優が主役の敵役として出演しています。何せ中国人の10人にひとりは見ていますので、殆どの中国人は「戦狼」を知り、敵役の「熊」もよく知っています。この「熊」という名前の俳優は実はプロレスラーです。しかもアントニオ猪木氏が主催しているIGFのリングにも何度も上がっています。映画ではロシア人となっていますが、実際はウクライナ人です。
名前をコズロフと言います。彼は身長198センチ、体重137キロで、この迫力ある面構えが悪役に抜擢されたのでしょう。
当時はWWEに所属していると聞きましたが、俳優の仕事もしているとの事です。

この大ヒット映画「戦狼」と出演している「熊」(プロレスラー コズロフ)を何とか生かす事は出来ないかと考えました。「何とか生かす」という事は当然、「入場料は取れない」・「会場費用はかかる」・「会場は満席にしたい」の3課題をクリアする事です。

これが、うまく成功するのか。それとも独りよがりの妄想だけで終わるのか・・・。

【追記】
22年8月28日、「24時間テレビ45」(日本テレビ系)を観られた方もおられるでしょう。
「24時間テレビ45」メイン会場の両国国技館にアントニオ猪木氏が登場。
難病の「全身性アミロイドーシス」を患い闘病中のアントニオ猪木氏は、車椅子に乗ってステージに現れると「元気ですか!」と会場に向かっていいました。
体調を聞かれると「見た通りで、その日その瞬間を必死に頑張っています」
「本当はもう起きる状態じゃないんですが、こうやって皆さんにお会いする事で私も元気をもらっています」と答えていました。
「猪木は今も闘っている。凄い」とネットニュースでは賞賛の声が多くあり、中には「猪木さんは病気だけど、病人ではない」と今のアントニオ猪木氏を一見事に言い表している言葉もありました。私にも多くの知り合いから電話があり「感動した」「涙が流れてきた」などのメッセージを頂きました。
実は私も泣きました。
前夜「猪木さんは明日、出られない」との連絡が入りました。その時は「猪木会長の病状が第一」として様子見する事になりました。翌朝、私の方から電話をしましたが、やはり「厳しい」との事でしたが、出演準備はしておくと、万が一のストレッチャーも念の為に用意されているとの報告でした。
そのようなやり取りをしての「24時間テレビ45」の「登場」です。
やはり彼はスーパースターです。

翌日の昼前に猪木氏から私に電話がありました。とても元気な声でした。

(次回に続く)

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