代表取締役 湯川 剛

2017年11月16日、日中友好会館に中国本土から欧愛水基のシンセン代理店の金董事長をはじめ、10社近い代理店董事長が集まってくれました。
中国大ヒット映画「戦狼」に主役の敵役「熊」で出演のコズロフがシンセンを来訪し、お客様大会が大いに盛り上がった事がきっかけとなって、中国の代理店が「プロレス」というものに関心を持ってくれました。
今回のプロレス会場は日本ですが、観客の殆どは在日中国人です。予想通りの熱狂の下に大会は終了しました。そこで私は中国本土から来た欧愛水基の代理店董事長に「皆さん方はプロレスを初めて観戦しました。感想はどうですか」と問うと、全員が「面白い」「中国はプロレスを受け入れる」など、全てが好意的だったので「このプロレスを皆さん方のエリアでやりませんか」と尋ねてみました。彼らはすぐに反応してくれました。「やりたい!」

しかしどうすればいいのか。公安当局は許可するのかとの質問がありました。
そこで私は「皆さん方は年に数回、お客様を招待して中国歌謡ショー等のイベントをしていますね。それをプロレスに変えるだけです」そして「公安当局は入場料を取らなければ許可は貰える」と伝えました。「12月にシンセン代理店が開催するプロレス大会があるので、次は中国で見て下さい。中国のお客様がどのような反応をするのかも参考にして下さい」と伝えました。

12月16日、私は羽田発香港行きの飛行機に乗りました。羽田空港で「いよいよこの日が来たか」と感慨深い気持ちになりました。本来は入場料を取って多くの不特定多数の人達に見て貰いたい気持ちでしたが、今回のように企業内のイベントとしてその企業のお客様のみを対象にプロレス観戦する事は本意ではありません。しかし、まずは「開催する」事実を作る事でした。欧愛水基の協力なくしてこの実現はありません。

12月17日。約800人を収容する地元体育館でのプロレス大会です。
バスが1台、2台、3台と体育館の駐車場に停まりました。シンセン代理店の各営業所からお客様を乗せたバスが14時の受付に合わせて次々とやってきました。勿論、殆どのお客様は「プロレス」というものを見たことがないと思います。
会場前にも、会場内にもプロレスラーの等身大パネルがあり、そこがフォトスポットになっています。また顔部分だけがくり抜かれたプロレスラーの凄い身体の等身大パネルがあります。そこに中国人の人達は素直に顔を出し、等身大プロレスラーの写真と肩を組みながら〝記念写真〟を撮っています。スティックバルーン(棒状の風船)も配られました。

シンセン代理店の社員さん達もプロレスのイベントは初めてですが、歌謡ショー等で約1万人のお客様招待を経験していますので混乱もなく会場に入場させていました。
会場の真ん中にはリングが設営され、お客様席との間に柵があり、リングには近づけないようにしています。
試合が始まる前にルールを説明します。何せシンセン地域においては初めてのプロレスです。
肩が床についた状態でスリーカウント、3つ数える内に起き上がれなければ「負け」。
また技が決まり、「降参」のサインを相手が出すと「負け」など、簡単なルールを説明します。お客様はそんなルールの説明を聞いても、なかなか分かるものではありません。
この日の試合は6試合ですが、1試合目や2試合目を見てもなかなか理解できないですが、3試合目くらいから徐々に理解してもらえるのではないかと思っていました。
さあ、第1試合目が始まりました。日本人プロレスラー対日本人プロレスラーです。
約800人のお客様は最初、何が始まるのか、興味津々の面持ちでしたが5分も経たずに会場のボルテージは熱を帯びてきました。スティックバルーンを叩きながら「加油!」「加油!」との声援です。よく聞いていると「日本人、加油!」(日本人がんばれ!)の声も聞こえます。私が好きな中国人の姿です。本当に素直な気持ちをそのまま表します。これと同じ風景は11月16日、日本の日中友好会館で目にした在日中国人観戦者の姿とまさしく同じで、中国本土で第1試合目から見事再現されました。
プロレスラーが繰り出す一つ一つの技や蹴る、投げる等の動きに、観客800人が「わぁ~!」と歓声を上げ、体育館中に響き渡ります。この雰囲気は、レスラー達も大変やりやすかっただろうと思います。

私は選手達が怪我なく無事に大会が終えられる事と観客の反応だけに気を配っていました。
1試合目と2試合目は「プロレスとは何か」を知って貰う為に日本人同士の試合でしたが、3試合目からは中国人対日本人のタッグ戦です。この時も観客は「中国人、加油!」の声援と同時に「日本人、加油!」の声援もありました。まるでオリンピック競技を観ている感じです。技が出る度に「わぁ~!」と歓声が上がり、いわゆるノリが良い雰囲気でした。

ところが3試合目と同じく、中国人選手対日本人選手のタッグ戦で迎えた4試合目。
3試合目までとは違い、少し会場内の空気が変わりました。
まず、日本人レスラーの2選手が入場門から登場。リングに続く花道でこの日本人レスラー達は中国人の観客に向かって、顔つきやジェスチャーで威嚇し、ヒールに徹していました。
そんな日本人レスラー達の姿に対し、観客の皆さんの不安げな顔や不満と反発が顕な空気感が会場に充満。そんな雰囲気の中、中国人レスラーの2選手が登場しました。
歓声が鳴り響き、レスラー達がリングに揃うとテンションは一気に上がりました。
この雰囲気は今の日本のプロレス界にはありません。
「やっつけろ!」私は中国語は分かりませんが、たぶんそう言っていたのだと思います。
試合は先輩格の日本人レスラーが優位に進んでいました。会場はため息ばかりです。それでも少し反撃すれば会場は一気に沸き上がります。

日本人レスラー優勢で試合展開される中、日本人レスラーがリング外に出た時の事。
ここで「事件?」が起こりました。

(次回に続く)

ご意見、ご感想は下記まで
support@osg-nandemonet.co.jp