前回まではお通夜から告別式までを中心にお話をしました。
今回から、私がなぜアントニオ猪木の最期を見届けたのかについてお話します。
ちなみに2017年から2人の関係はある問題で遠のいていました。その経緯についてはこの「人生はプラス思考で歩きましょう!」(略、人プラ)で既に掲載されていますが、正しくは当時の猪木サイドの者達から2人を「遠のかされた」と言った方がいいと思います。
人間とは自分達の利益を得るためには愚かな行為をするのだなという事をその時、私は学びました。私の人生ではあまり出会わなかった人達です。
私は猪木を40年間見て来ました。猪木を取り巻く周辺の人を私なりに分析すると、大きく3つのグループに分ける事が出来ます。
1グループはスポンサーまたはタニマチ。
よく私の事を週刊誌が「猪木のタニマチ40年」と書かれていますが、私は残念ながら猪木のタニマチではありません。私の場合は猪木にCMなどに出演してもらい報酬を支払うスポンサーの立場かもしれません。
私なりにタニマチを定義づけると、「小遣いを上げる人」やタニマチの「食事会に呼びつける人」と、他の人が一般的に思っている感じです。勿論、私は猪木に小遣いなど上げた事も呼びつけた事もはありません。私の知る限り、猪木の最大のタニマチの代表格は佐川清氏であり、あまりにも有名な話しです。しかもケタ違いの額です。
2グループは猪木に近づき知名度を利用してビジネスをし、それに対する正当な対価を猪木に支払わない、または猪木を利用して小遣い稼ぎをしている人達です。
よくネットニュースで「猪木の取り巻き連中が・・・」はこの人達を指しています。
3グループは純粋な猪木ファンです。中には過激な人は猪木教の信者であり妄信の人達です。猪木信者の皆さんはどのような状況に猪木が置かれても猪木を絶対見捨てない人達です。
例えば、私と猪木が裁判で闘っていると、過激なファンの方は「湯川は許せない、罪悪人」と思っていたでしょうね。何のエビデンスも確認しないで、ただただ言われている事を信じてしまう純粋な猪木信者の方々です。勿論、私もその事情を把握していますので、猪木信者の方々には十二分に理解をしています。
表現として適切でないかも知れませんが「猪木の財布」に例えると面白いです。
「猪木の財布に入れる人」か「猪木の財布から抜き取る人」か「猪木の財布に無関係な人」が、猪木を取り巻く周辺の人を私なりに分析する人達です。
実は、猪木自身もそこのところはよく知って付き合っています。
猪木に近づいてくる怪しい集団もいます。過去に私が知る永久発電機等の環境ビジネスの詐欺師的な人達とも出会いました。私など「猪木さん、これはおかしい」といっても、意に介さない時もあります。何せ猪木の尊敬するジャンルに「詐欺師」があります。猪木曰く「詐欺師は人々に夢を与えてくれる。騙すのがうまい。尊敬する」と言い放ちます。
この話は私と猪木が付き合っていた時の話で、2017年以降は知りません。
さて、2017年以降、当時の猪木サイドは猪木との交友関係を断ち切るかのように突然、電話番号が変更されました。それにより私を含め、猪木サイドに都合の悪い人達は猪木との連絡を取れない状況にしていました。猪木から排除する訳です。猪木本人もその事を非常に嫌がっていました。次々と猪木から去っていく人もいました。
そんな状況の中で「湯川会長と猪木さんが連絡を取れば1秒で全てが解決できます」と数少ない猪木と交流を持っていた方々から私のところに連絡がきました。一時期、実弟の啓介さんも連絡が取れないようにされていました。人伝で電話番号を知った啓介さんはそれから猪木と連絡が取れるようになりました。その事をきっかけに「兄貴から湯川さんに新しい電話番号を伝えてくれ」と変更した電話番号を私も知りましたが、原告と被告の係争中にて私から連絡する事はありませんでした。
21年8月25日18時。
啓介さんと前IGFで現在の猪木元気工場の髙橋社長がやってきました。
髙橋社長も連絡が閉ざされた一人です。啓介さんから電話番号を教えて貰ったのでしょう。その髙橋社長が私の目の前で直接猪木に電話をしました。
「湯川会長に変わります」と電話をスピーカーに切り替えました。そこには猪木さんの弱弱しい声が聞こえてきました。久しぶりの会話です。猪木は開口一番「すみません」といい、私も「猪木さん、連絡しないですみません」と言いました。
多くの人が「1秒で2人の関係が修正出来る」は事実でした。
仲介役の髙橋社長と啓介さんには感謝します。この電話がなければどのようになっていたのでしょう。こうして私と猪木との関係が一歩前進しました。
先ほども言いましたように、私と猪木は原告と被告の関係でした。裁判案件は3件ありました。1件は私個人と猪木との裁判で私が勝訴しました。残り2件の未解決は、私直接の案件ではありませんが、実際には私と猪木との案件と双方代理人とも認識していました。
当時、私は和戦両方の対応をしていましたが、猪木サイドの出方によっては徹底的に戦う気持ちでした。そこのところは以前にもこの「人プラ」で掲載済です。
猪木サイドが過去に、ありもしないでっち上げた話で多くの方が泣き寝入りをしていました。これに対してお灸を据える気持ちで、私の場合は徹底的に戦う事を決めました。
でっち上げとして私が知っている事例をお話しします。元IGFのA社長が「1億円横領」したと猪木サイドの中心人物であった女性があちこちで吹聴し、その為本人が怒り辞任提出しました。私はそのA社長をよく知っていますので、猪木に「そのような事実はない筈だ。第三者に調べるように」と言い、その結果、猪木と親しくしていたスポンサー会社から役員を派遣して6か月間の調査でそのような事実は何もなかった訳です。そのA社長の前のH副社長も私は「お金を使い込んで辞任した」という事を聞かされていましたが、今から考えればH副社長の辞任理由も事実ではなかったのでしょう。当時私はその吹聴を私自身信じていました。恐ろしい事です。A社長もH副社長も共通点がありました。それは猪木サイドの中心人物であった女性が2人を気に入らないのが共通点です。A社長の場合もその女性が会社の経費を使い放題した事を指摘した事が気に入らない理由でした。今回の裁判案件も全く同じ原因です。それを指摘した事により事実無根のでっち上げ話が最初でした。ただ私の場合はそれに対して泣き寝入りをしなかっただけです。
そんな関係で2017年以降、私サイドと猪木サイドとの裁判が続いていました。
しかし今回のように何故、私と猪木が関係修復の雪解けになったのかは、ある出来事を抜きに語る事は出来ません。
2021年3月1日の出来事から始まります。
この日のたしか午前中に、知り合いの大手新聞社スポーツ局の記者から1本の電話がありました。「アントニオ猪木が亡くなったという話が入ってきた。湯川さん、本当ですか?」という内容でした。
私は驚き「ある事情でここ数年、彼と連絡を取っていない」と回答しました。その後、数名の方から同じような確認の電話がありました。
夕方になり「猪木死亡説」はガセネタである事が分かりました。原因はある政治家の勘違いの発言である事は後日分かりました。しかしこの「猪木死亡」が私の気持ちに大きな変化を与えました。当時、私は猪木の電話番号が変えられ、連絡を取る事が出来ません。実弟の啓介さんも新しい電話番号が知らされていない時です。私は猪木サイドに連絡がつながるだろうという数名に連絡をしました。それは「猪木死亡」が噂であったとしても、もしかすれば猪木は重体もしくはそれに近い状況でないか。その時にもしかすれば猪木サイドに治療費等に問題があるのならと思い、「猪木の治療は全て私が負担する」という伝言でした。
原告と被告の関係でありましたが、それはそれとして「健全な猪木」と戦いたいという気持ちが強くありました。このメッセージが猪木本人に届いたかどうかは分かりませんが、私の気持ちはこの時に大きく変化しました。「猪木を助ける」という気持ちでした。
その後、猪木の衝撃的な映像がYouTubeで流されました。
あれから約6か月が経ち、お互いが連絡を取れるようになりました。
それ以降、猪木は殆ど毎日のように私に電話をしてくれました。
猪木が電話をする時は本人の近くに誰かがいない時を見計らってかけているようです。電話の内容は殆どがお互いの代理人が「和解」に向かって動いているのに一向に実現しない事への猪木からの苛立ちです。当時は双方の代理人とも和解の方向で動いているのですが阻止する原因はいつも猪木サイドからある事を伝えると彼は「分かっている」といいます。電話口から猪木のもどかしさが手に取るほどわかります。身動きのできない本人にとってはそれは歯がゆい事であり辛い時です。猪木は世界中を縦横無尽に走り回った男です。それだけに尚辛かったでしょう。重い難病に冒され自ら身動きが取れない事を人質に取られているようなものです。その事に私は断じて許せないほどに怒りを感じていました。
そんなある日、猪木から「ぜひ会いに来てほしい」というメッセージを啓介さんから聞きました。私のスケジュールの関係で約1か月後の日時を伝えました。
その日が、2021年10月28日(木)15時面会の日時でした。
ところがなんとその日は、某週刊誌が私と猪木との関係を書いてある発売日でした。記事の内容から誰が情報源かはすぐに分かります。2人が直接連絡を取るのを困る人達です。週刊誌の記者が利用されたのでしょう。それにしても発売日と私と猪木との面会日が同じ日とは、皮肉った話です。
この日、病床の猪木から「3つのメッセージ」を私に託しました。
次回は、11月20日に掲載します。
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