代表取締役 湯川 剛

「もしもし髙橋社長ですか。あけましておめでとうございます」
電話の相手は東海エリアで手広くベーカリーショップ他、喫茶店等、多角的に運営している髙橋社長でした。私とも古い付き合いです。私はいきなり食パン専門店「根上」を知っているかと尋ねました。勿論、知っているとの事です。髙橋社長の店舗近くでも開店しているとの事でした。私がベーカリーについて尋ねる等、今までなかった話です。
そこでいきなり私が「髙橋社長、私と食パン専門店をやりませんか」に髙橋社長は「はぁ?」とこんな感じでの話でした。そこで昨日までの経緯を話しました。ただ相手がこの数日で連絡があった場合はこの話はなかった事にして下さいと伝えました。

前回もお話ししましたが「東京の出店はダメです」「水にコストをかけません」とコールバックがあれば、この話はここで終わっていたと思います。結果的には「銀座に志かわ」の誕生もなかった訳です。話を戻します。
髙橋社長は「湯川会長がやるなら、私がお手伝いする事は問題ではありません」との事でした。そこで私は「相手から連絡がなく、もしやるとしたら2つの条件があります」と伝えました。
第1条件は「食パン作りに是非、水にこだわってほしい」と伝えました。
実は、髙橋社長は数年前からパン作りに水は重要だと認識を持っている経営者でした。
その為、天然水をはじめとしていろいろな水を試している事も知っていました。
また以前からOSGのアルカリイオン整水器を自宅でも使って頂いている経緯もあります。
そこで私は「いろんな水を試しているが、これからはアルカリイオン水のみを使用した食パン作りを試して欲しいのです」いわゆる「特化して欲しい」とお願いしました。
この時は、もしかすれば森上会長から連絡が入るかもわからないので、それ程、詰めた話はしませんでした。髙橋社長はいろいろ試しているより、むしろ「アルカリイオン水を使用」と決めて貰った方がいいと思われたかもしれません。ただ後日談ですが、髙橋社長の話によると「パン作りの教科書には仕込水はアルカリイオンの水とは真逆な弱酸性の水が適している」との事でしたが、この時は「わかりました」との事です。結果的にはこれが大きな意味をもたらす訳ですが、食パンの神様はこの時は黙っていた事になります。

この時の電話では快く「わかりました。実は自分の母親もアルカリの水は手放せられないと大変気に入っている」の話に私も嬉しくなりました。
次に私は2つ目の条件を言いました。
それは、ロールスロイスには乗らないで欲しいと伝えました。たぶん髙橋社長はいきなり「私と食パン専門店をやりませんか」との想定外の話と同じ位「はぁ?」と思われたかもしれません。その経緯もお話ししました。
そこで私は何故、乗ってはいけないのかの自論を伝えました。それは食パン専門店の経営は朝早くから頑張っている工房の人達から成り立っている筈です。この人達の事を考慮して経営者は行動しなければなりません。よってもし高級車を乗っていても言わないで欲しいとの理由を説明しました。髙橋社長も「よくわかりました。大丈夫です」という事でこの日の電話は終わりました。

それから6日が経ちました。森上会長の電話を待っていたのですがありませんでした。
1月22日15時30分。私は改めて髙橋社長に本格的にお願いする形で電話をしました。理由は、明日から上海出張があり、その前にすっきりしたかったからです。

どうも私は過去の経緯から考えると気持ちの中で「かっ!」とした怒りのようなエネルギーから行動を起こしている事が多々あります。
OSGが創業3年目にして「第1次7か年計画」の「自社ビルを建てる」という目標設定したのもそのような「かっ!」としたところから派生し「それならよし、やってやる!」という気持ちがエネルギーになり、行動を起こしています。
もう既にこの「人プラ」で掲載されてある話です。
また第2次5か年計画「低周波治療器リズムタッチ業界ナンバーワンを目指す」の時もそうでした。「よし、それならやってやる!」と導火線に点火した瞬間のような気持ちです。第4次10か年計画「株式上場を目指す」もそうです。全てこの「かっ!」とした点火から始まっています。本来ならばその時はネガティブな状況なので気持ちが折れたり、諦めたりするのですが、どうも私の場合はその逆になります。
当時は若さゆえもあり、怒りのエネルギーは相手に向かってのエネルギーでした。
ただ第4次10か年計画の場合は、相手に対する怒りではありません。むしろ自分に対しての「怒りのエネルギー」です。
この時の食パン事業進出の意欲の始まりは、当然の事ながら相手に怒っているのではありません。むしろ私の心の奥底からふつふつと湧き出てくる何とも言えないエネルギーを感じる手応えみたいなものがありました。
「よしっ。やってやろうじゃないか!」は71歳の決意です。
仮想敵国を立ててそれに向かって走る。長年そのようにして来た事が体に染み込んでいます。こうなると私の気持ちは止まりません。自分でも不思議な位、エネルギーが湧いてくるのです。

前年の2017年。あと3年で創立50周年を迎えるにあたり数年かけて全ての事業から手を引くと思っていた私が、これまでに取り組んできた事業領域とは全く関係のない「食」分野に挑もうという気持ちになりました。
私には「食」の分野に何の経験も知識もありません。しかしこの時は不安等を考えている時間があるならば、その不安を解消する方法に時間を費やすべきだと思いました。自分に「食」の分野に経験も知識もないならば経験豊かな人にお願いをすればいい訳です。
ただただ「よしっ。やってやろうじゃないか!」という気持ちがまずは大事です。

外は寒く、私の気持ちは熱くなっていました。
71歳の「かっ!」が始まりました。

次回、3月10日に掲載します。

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