代表取締役 湯川 剛

1月22日月曜日。東京では午後から4年ぶりに雪が降りました。
15時30分。513ベーカリーの髙橋社長と「パン事業」について話しました。
私は1月16日の森上氏との会話以降に、私なりに「パン事業」の市場性や将来性について調べました。ベーカリー市場そのものは1兆5千億円の市場がある事もわかりました。
食パン市場は全体規模の約4分の1弱にあたる3500憶円程度だと認識しました。また日本人の主食が米からパンに変わっている事も理解しました。
この時点までの私はパンの市場など全く関心はありませんでした。市場統計等での知識はわかりましたが、ここはやはり長年ベーカリー業界に経営している髙橋社長と生の考えを聞きたいと思いました。

いずれにしろ私の50年近いビジネスは殆どが「この世にない商品」を取り扱っていました。創業当時「家庭用浄水器」等、電話帳ですら載っていません。そこらの話は、この「人生はプラス思考で歩きましょう!」(略「人プラ」)で既にお話ししている事です。
いわゆる当時では家庭用必需品でもなければ社会の基幹製品でもありません。言い方を変えればなくてもいい商品や製品でした。これらを普及する為の以前の問題がありました。
それはまずは認識して貰う事です。例えて言うならば家庭用浄水器を普及する前に「家庭用浄水器というものがある」という認識です。今でこそ「お金を出してお水を買う」という生活文化が根付いていますが、1970年創業時には多くのお客様から異質に思われました。私のビジネスは全て「ベンチャービジネス」です。従来にない市場を作り上げていくのです。この戦いです。
話は変わりますが、アントニオ猪木氏がプロレスをプロボクシングやキックボクシングと同じようなポジションにもっていきたいと思っていました。大相撲の結果を一般紙に掲載されているようにしたいと真剣に思っていました。エンターテイメントな要素は大相撲にもボクシングにもある訳です。それでなければ観客は支持しません。猪木氏は他のスポーツから一線を引かれたプロレスをどのように「闘いのスポーツ」で見て貰うのかという同じような感覚でした。市民権を得たいという事でしょう。それがプロボクシングのマホメッド・アリと闘い、プロレスも同じなんだと訴えたかったのだと思います。
私も「家庭用浄水器」の市民権を得る為に大手企業と取引し、そして「何としても株式上場しなければならない」の考え方は、アントニオ猪木氏と重なります。
だから私は彼に共感するのです。
よって「食パン」を取り扱う事は、私にとってこれ程の「異種格闘技」はありません。

髙橋社長の話は新鮮でした。何よりも毎日お客様が来店されるという事です。私は50年近く経営をしていますがお客様から買いに来られる事など殆どありません。夢のようです。しかも「食パン」についての説明など要らないのです。創業当時、私はカバンの中に浄水器を入れ、1軒1軒訪問販売をした経験者から見れば考えられない事です。この時既に「食パンほど、販売しやすい商品はない」との大前提に立っています。

私の知り合いで関西で有名なチーズケーキ「デリチュース」の長岡社長が私に教えてくれた言葉はあります。それは「どこにもあるが、どこにもない製品」という言葉でした。
「チーズケーキはどこにもある。誰もが知っている。チーズケーキの存在を説明する必要はない。でもデリチュースのチーズケーキはどこにもない商品です」に当時は羨ましく聞きました。ちなみにこの年の10月24日に水宅配事業「ウォーターネット オーナー会」に長岡社長を講師にお迎えました。

さて、当時は日本電信電話公社の分厚い職業別電話帳に「家庭用浄水器」の住所録をお願いしましたが、従来にない商品の為、確か「その他」で掲載して貰った記憶があります。創業時のつらかった事の一場面です。でも今ではスマホで「かていようじょうすいき」と入力すると「家庭用浄水器」の文字が出てきます。私は時々スマホで「家庭用浄水器」という文字を検索し、何かしら安心した気持ちになります。特につらい時にそれをやります。おかしな話です。そして「ここまで来たやん」と自分を勇気づけします。

話が横道にそれましたが私の「食パン」ビジネスに対するバックボーンを知って頂きたいので掲載しました。そうです。「食パンはどこにでもある。しかしどこにもない食パンを提供する」が私達の考えの1丁目1番地でした。

さて話は髙橋社長との話に戻します。
当時の1月22日の私の日記には、銀座「はしかわ」(橋川)と書いてあります。
更に「5月13日オープンを目指す」と書かれてあります。このオープン日の根拠は髙橋社長の「513ベーカリー」から来ている訳です。当時から考えれば僅か4か月後にオープンするという今から考えれば無計画な話をしていた訳です。おそらく「仮の話として・・・」と2人は少し盛り上がったのでしょう。
とはいえ、時間をかけて行動していてはいけません。
私は従来ある「食パン」すなわちスーパーやコンビニ、更に街のベーカリーショップでの販売ではなく、高級食パン専門店は従来とは違ったマーケットを狙っている訳です。
という事は、これはベンチャービジネスなのです。ベンチャービジネスに要求されるのは一にも二にも「スピード」が要求されます。そういう意味では極論ですが、今から4か月後にオープンする発想が大事なのです。そうしなければ従来の成熟化したビジネスがあながち行う前例主義や建前主義では新しいマーケットへの参入は厳しいのです。

私はこのスピードが要求されるベンチャービジネスに対して、髙橋社長に2つの戦略について話をしました。
2つの戦略とは。

次回、3月20日に掲載します。

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