代表取締役 湯川 剛

1月31日。森上氏と面談して15日目の事です。
前回もお話ししましたようにこの日、髙橋社長と特許事務所の先生とのミーティングがありました。前述通り、ここ1週間、没頭して考えた「銀座仁志川」という社名を披露しました。
この日は開業前の法令順守について話す事が目的の1つでした。

私にとって「食パン専門店」ビジネスは、ベンチャービジネスと位置づけしました。
ベンチャービジネスに不可欠なのは「スピード感」です。
その発想から2つの戦略を立てた事も前述通りです。それが「同質化戦略」と「差別化戦略」です。「同質化戦略」を採用したのは、ただただ「スピード感」以外にありません。
この日の打ち合わせでは、もう1つの戦略「差別化戦略」についてです。
如何に他社との「差別化」を図る事が重要な訳です。そのひとつに「商品」があります。

高橋社長の話によると、以前からパン作りの仕込水についてはかなりの「水」を研究をしているとの事でした。いろいろな天然水等も用いての研究開発です。
ただこれからの仕込水は「アルカリイオン水」に決定された訳で、逆に言えばこれに集中出来る訳です。この時、髙橋社長は「明日、513ベーカリーの食パンをOSG本社に送ります」との事でした。まずは513ベーカリー食パンを試食しようと思いました。
但し「仕込水」はアルカリ水ではありません。

特許事務所の先生には「同質化戦略」で問題になるか、ならないかの判断をして貰う事でした。例えば同業他社が「生食パン」を商標登録されているのなら、私達は最初からそのコンセプトに関わりあう事はありませんでした。そうしなければ「差別化」にならないからです。
後日、知った事ですが、どこかの食パン専門店に「純生」食パンと書いてあるブランドがある事を知りましたが、それは「生食パン」を意識したネーミングであり、私からみればそれは「先行者」に優位性を与えるようなものです。どこか「二番手」のイメージを感じるのは、私だけでしょうか。

仕込水に多くのお水を試していた髙橋社長に「アルカリイオン水」に特化して作って欲しいとお願いしました。ベーカリービジネスを経営している髙橋社長からすれば、「食パン」作りに全く素人な私からの要求は余りにも無理難題だったかもしれません。
その証拠に後日、髙橋社長が「水と暮らす」というインタビュー記事に下記のような事が掲載されていました。
『湯川会長に勧められた際、試しにアルカリイオン水を仕込み水に使ってみたのですが、やはりパン作りにはかなり難しい水でした。パンがまとまらず、すぐに崩れてしまうのです。パン業界では「ケービング」といいますが、きれいな正方形に焼き上がらずにぐしゃっとつぶれてしまう。パンの教科書では「弱酸性の水を使うのがパン作りには適している」とあるのに、その真逆の水を使うわけですから。
しかし、アルカリイオン水は、日本料理において「だし」をとるのには非常に向いています。高級料亭や高級旅館、ホテルで使われているこの水でパンを作れたらおもしろいのでは、と挑戦を続けました』(「水と暮らす」/素材のうま味を引き出す水にこだわり大ヒット!「銀座に志かわ」高級食パンより)

当時はこのような「挑戦」をしながら「差別化」を求めていきました。
この「アルカリイオン水」こそが「銀座に志かわ」食パンの独特な風味を生み出す訳ですが、何度も言いますが、この時点ではまだわかっていなかった訳です。
ただ「食パンの神様」が「お前の身近なところに凄い武器があるじゃないか」と授けてくれた訳です。

それが後日「水にこだわる高級食パン」の誕生であり、商標登録につながる訳です。

次回、4月20日に掲載します。

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