代表取締役 湯川 剛

前回の第550回にも説明しましたが「人生はプラス思考で歩きましょう!」(略「人プラ」)は約5年前の事を掲載しています。現在であれば2018年当時の事です。
具体的には「銀座仁志川」誕生前夜になります。

さて今回も前回に引き続き、2023年現在の事を書きたいと思います。
ここで改めて「銀座仁志川」の社名由来は既報の通り2018年創立時に「仁志」は「人に志しあり」の思いが込められ、「川」は「世界の海に流れていく」という意味で名づけられました。そのような意味では「銀座仁志川」の食パンを世界に通用するパンでありたいとの思いが創業以来からありました。
今回は、23年5月5日「銀座に志かわ 上海新天地店」がオープンについてお話します。22年7月7日の「サンタモニカ店」オープンから海外出店は2店舗目になります。

尚、中国政府の「ゼロコロナ宣言」にて、上海新天地店オープン予定が9ヶ月を超える空白期間が生じました。オープンに至るまでの多くの障害や苦労の数々がありましたが、それらの話は5年後の2023年あたりの「人プラ」で掲載したいと思います。

2023年5月5日に「銀座に志かわ 上海新天地店」がグランドオープンしました。
グランドオープンに先駆けて2週間前の4月21日にソフトオープンしました。
オープン初日になんと500人以上のお客様が、上海新天地店が入居する香港プラザビルをぐるりと囲む程の長蛇の列が出来ました。
初日にオープンを待ちかねた多くのお客様の行列に合わせて、SNS上で一気にヒートアップしました。日本ではオープン前にチラシを撒いたりしてオープン日を告知します。中国にそのようなチラシ文化はありませんが、オープン前からSNSで話題になっていました。
「本当に銀座に志かわが上海に来るのか」「偽物の銀座に志かわじゃないのか」という内容です。サンタモニカ店で在米中国人が買っている事も話題になっていました。

いよいよ、ソフトオープンの10時になりました。結果的には、オープン僅か1時間足らずで在庫がなくなりました。その事で一部のお客様が騒がれました。その経験から2日目より「整理券」を発行したのですが、その翌日には「偽整理券」が出回りました。中国らしいと言えばそれまでですが、私達日本人はこの行為に驚くばかりです。しかもその「偽整理券」そのものを売買するダフ屋も現れました。
中国語ではダフ屋の事を「黄牛」と書きます。この「黄牛」の人達が店の周りに十数人、たむろっています。入居の香港プラザビルの警備員が注意をするのですが、一向に減りません。また逆に中国では「黄牛」達がいる店は、人気店であり、話題の店という事らしいです。
3日目に「偽整理券」がある事が判明しました。そこで銀座に志かわ 上海新天地店の中国人スタッフが「偽整理券」と正規の「整理券」を区別する為に、一旦店を閉めました。
ここに大きな問題が生じました。
多くのお客様が「整理券がある!」と言ってドアをこじ開けて入ろうとし、それを押し留めるスタッフとの間で、店内が大混乱しました。
ソフトオープン当時、日本から工房2名、店頭スタッフ1名が応援に派遣されていました。
その店頭スタッフの1名が日本では考えられないような光景に本人も混乱したとの事です。
外からはお客様がドアを開けようとし、それをスタッフが中から入れないようにドアを押さえます。その事で入口のガラスドアが破壊されるのではないかと思われる程、危険な状況になりました。
日本から派遣された工房の1名が、ガラスドア越しに止めようとしているのを中国人女性店長が「日本人は中に入って下さい」と指示したらしいです。理由は、その光景を全てSNSでアップされるからです。「日本人が・・・」となる恐れがあるとの事で、23歳の女性店長が機転を利かせての行動です。

この騒ぎに、地元警察官が数名来て、ようやく事態が収まりました。それらの事は全てSNSでアップされています。僅か3日で中国のネットニュースのトップニュースになりました。
「銀座仁志川」という文字が氾濫いました。OSG本社にいる中国人スタッフもそのネットニュースを把握していました。また日本にいる複数の中国人の友人からも連絡が入り「上海で銀座に志かわが大変なことになっている」との連絡も入りました。中には自分の故郷で銀座に志かわをやらせてほしいとの連絡もオープン3日目に電話がありました。予想超えた反響に驚いていました。

地元警察からは「当日の販売方法は禁止する事」「今後、このような騒ぎになると強制的に店は閉鎖させる」と強い指導が入りました。その結果、当初の計画にはなかった「全ては予約販売」という事になりました。

4日目。10時オープンの10分前。9時50分に予約受付を行ないました。
結論から言いますと、受付僅か30秒もかからないまま、当日の生産本数は全て売り切れた状態になりました。勿論、全て入金済み予約です。
日本では税込み950円ですが、上海では98元となります。サンタモニカ店同様に重要な原材料は日本から輸送しますので、やはり日本よりはコスト高になります。そのような関係から「98元」を設定しました。オープン当時の為替で換算すると約2000円になります。

これを「黄牛」は98元で買い、大体300元(約6000円)で転売している訳です。
いくら経済成長している中国であっても考えられない価格です。しかもこの現象が数日で終わるのではなく、オープン以来、現在においても継続しているとの報告です。
私は5月5日のグランドオープンセレモニーに参加する為に、前日上海入りしました。
事前報告の通り「黄牛」が10名程、たむろっていました。中には、上海新天地店スタッフと同様に「黄牛」が商品説明をしているではありませんか。初日・2日目の食べ方から、3日目にはこのように食べた方が美味しいとの事です。私は通訳から聞いて驚きました。
私から見れば一見普通のサラリーマン風の男性が300元を出して買っている訳です。
店頭では暖簾の前で食パンを持って記念写真を撮っている風景は、日本の銀座に志かわと同じ光景です。店舗の前に椅子が並べてあるのですが、その場で食べているお客様もいました。

グランドオープン当日の夕方に、中国人スタッフから、とんでもない話を直接聞きました。
高級車ランボルギーニに乗った30代らしい男性が店舗に入ってきました。
当然、店頭での商品は売切れです。そうすると「黄牛」が彼に寄ってきます。彼は何人かの「黄牛」と話をし、ある者から4袋を受取りました。そしてその場で、6000元を支払っていたとの事です。日本円に換算して約12万円です。2斤1本が3万円の計算になります。これが中国なのでしょうか。
私はその高級車の価値も分かっていませんが、中国人スタッフに確認すると、日本円で約1億円らしいです。

私は中国銀座仁志川の王総経理にオープンまでの苦労を労い、しかしながら「黄牛」達がこのような状況になる事で意見を求めました。工房スタッフは早朝より工房に入り、一生懸命美味しいパンを作る為に頑張っています。彼らは「98元」を「300元」で販売している訳です。予約受付の30%程は「黄牛」達が食パンを確保しているらしいです。
34歳の王総経理はこの「黄牛」達の暴利を防ぐ為にも、この1年で上海周辺に10店舗の出店を考えているとの事でした。私達は中国人に「銀座に志かわ 食パン」を認められた事は大変嬉しいですが、一部のお金持ちの為だけの「銀座に志かわ 食パン」ではありません。
「98元」は高いようですが、中流階級の人々なら十二分に買える金額であり、そのようなクラスの人に食べて欲しいと思っています。

「銀座に志かわ 上海新天地店」オープンして中国上海人の人達に僅かな期間で「銀座に志かわ」の名前を認知して貰い「食パン」を認めて貰った事は想定以上の出来事で正直戸惑いながら嬉しい出来事でした。同時に「黄牛」を使って一部のお金持ちの人達が多額な金額を支払って「食パン」を買うという、日本では考えられない文化に驚きながら「銀座に志かわ 上海新天地店」は無事オープンしました。

次回、6月20日は、従来の「人プラ」に戻って掲載します。

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