代表取締役 湯川 剛

「銀座に志かわ」は想像以上の好スタートを切りました。売上もそうですが、全く予想していなかったのは、テレビ局を始め、雑誌等の取材が殺到した事です。あるテレビ局の番組が取材に来ると、他局の番組取材の申込が次々と入ってきました。また、同じテレビ局でも別の番組にて取り上げられる、という展開になりました。
当時はマスコミからの取材に対応するだけで「何故このように取材が来るのか」という分析をすること自体していませんでした。その理由が数か月後に判明しました。

マスコミが「銀座に志かわ」を取り上げる要因として、私たちは2つあると思いました。
1つは、5年前から関西を中心として販売していた高級食パン「根上」の存在をおそらく把握していないまま、いわゆる「生食パン」という新しいジャンルを引っさげて「銀座に志かわ」がオープンした事が話題になったのだと思います。従来にない、焼きたて出来立ての食パンに対する評価が、更にメディアに取り上げてもらった要因です。とにかくこのような「生食パン」はないわけです。焼きたて出来立ての食パンは魅力的です。
しかも、従来のスーパーやコンビニに売っているビニール袋に入った食パンではなく上品な紙袋に入った「生食パン」は、贈答品として東京のお客様にウケたのでしょう。1人で10本・20本も購入されるお客様が出てきました。メイン通りではなかったので、駐車がしやすかったのもあります。「俺のベーカリー東銀座店」のように昭和通りや晴海通りのメイン通りではなく、「銀座に志かわ」が路地にあったことも功を奏しました。オープン前夜の私の悩みは何だったのでしょう。
中には、千葉・埼玉・神奈川などの遠方のお客様も車で来られます。
勿論、ビジュアル的にも取り上げやすかったのではないかと思います。それは、やはり「暖簾」の存在です。和モダンのコンセプトが良かったのでしょう。
「暖簾」に店名を書くのではなく「食パン」と大きな字で書いたことが分かりやすかったのでしょう。それと「銀座仁志川」にオープン当時から「広報」があったことだと思います。テレビや雑誌の取材に「広報」が全面的に対応したことが「中々メディア対応に慣れているな」とメディア側に好印象を与えたと思います。

マスコミが「銀座に志かわ」を取り上げるもう1つの要因は「銀座仁志川」の所在地が大きく影響したと思います。「銀座仁志川」周辺は、実は出版社を含め非常にメディア本社が密集しているエリアです。いわゆる「地の利」があったのだと思います。
それを表す出来事として、出版社やテレビ局から急に取材が入ってくる事がありました。
「明日、暖簾の前でテレビ取材をしたい」との申し入れです。もちろん私たちは快く受けました。
以前、私は大阪で次のような話を聞いたことがあります。
某在阪テレビ局の「困った時の天神橋筋商店街」という話です。何かドタキャンがあったり企画が行き詰った時に、とりあえず「天神橋筋商店街でインタビューする」という事をテレビ局の取締役から聞いたことがあります。
そのような現象は特にコロナ禍に入ってから急激に増えました。取材費用の予算が取れないとか、時間がない時に手軽に「銀座仁志川」を活用して頂けるという事です。
この話をメディアの親しい方にしたところ、「その分析は少しは当たっているが、やはり話題の食パン専門店であることが取り上げの原因ですよ」と言って頂きました。私としてはどちらにしても取り上げて頂ける事は嬉しいのですが、やはり「話題の食パン専門店」ということで取り上げて頂ける事は、非常に嬉しい限りでした。

そうこうして1か月が過ぎた10月末に、高級食パン専門店の先駆者である「根上」が東京に進出する、という話が入ってきました。
11月に東京進出第1号店として、麻布十番周辺に「根上」がオープンするとの事です。

いよいよ「根上」の東京進出です。これにより、オープン当時「銀座でホットな戦い 食パン戦争」としてクローズアップされた「銀座に志かわ」の対立図が変わってきました。
「根上」の東京進出により、メディアは「実は生食パンは根上の方が5年早い」ということで、食パン専門店「先発VS後発」や「東京(銀座に志かわ)VS大阪(根上)」の対立図でマスコミに取り上げられるようになりました。

「さぁ、来たか」

次回、11月10日に掲載します。

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