代表取締役 湯川 剛

食パン専門店「根上」が2018年11月に東京進出しました。場所は麻布十番です。
話を10か月前に戻します。
2018年1月16日です。「根上」の共同経営者の1人であり、旧知の森上氏との出会いが「銀座に志かわ」誕生のきっかけだと何度か「人プラ」で掲載しています。この時、私は「銀座にビルを持っているので、根上銀座店をやればどうか」と言いました。
森上氏から、麻布十番で出店する、という話はありませんでした。むしろ「東京にはまだまだ出店しない。むしろ東京だけは出ない。東京に出るのは最後」というような話をしていました。だから「根上銀座店」出店はあり得ない、という話です。もし実現していれば「銀座に志かわ」は誕生せず、幻の食パン専門店「根上銀座店」が東京進出の第1号店になっていたわけです。このことは「食パンの神様」しか分からない話です。

再び、話を「根上」東京進出に戻します。
東京進出にあわせて「根上」の共同経営者の1人である坂根社長が「奇跡の食パン(仮称)」という本を出版されました。私は共同経営者の森上氏とは長年の付き合いで知っています。
しかし、坂根社長はテレビでは何度か拝見したことはありますが、全く面識はありません。その「根上」の創業者が書かれた「奇跡の食パン(仮称)」です。
私はすぐに購入しました。
読んでいて正直「面白い」と思いました。同時に「参考になる」と思い、最後には「何故このような本を出版したのだろう」と半分相手側の気持ちを察していました。
本の第1ページの「はじめに」に書かれてある文章に「この本を手に取った下さった方々の中には、仕事に悩みを持つ人もいるだろう。どのように世の中を関わればいいのか、道に迷っている人もいるかもしれない。これから語る事がその全てを解決できるとは思わない。しかし、少なくとも元気をもたらせるのではないだろうか。」と書かれてありました。
正に、私に向けて書かれてある文章でした。
これからの「銀座に志かわ」について、どのような方向を進めばいいのか迷っている中で、この「奇跡の食パン(仮称)」は私にとってデビュー戦のマニュアルでした。

例えば「東京だけが知らない根上の食パン・・・」という箇所のところです。「根上」ではその当時100店以上も展開していながら、東京には1店舗も出店していませんでした。
そこのところは、森上氏から既に聞いています。その理由も書かれていました。そこには私と真逆な発想がありました。「なるほど」と坂根社長の考えに一理あると思いました。
本の中では『「東京」をひたすら待たせる。(略)東京は物と情報が溢れており、都民の選択肢はとてつもなく多いからだ。(略)一時的には話題になるが、すぐに埋もれる。』この箇所は、森上氏も東京に進出しない理由として、私に「東京は情報が溢れていてすぐに取り上げてくれるが、ネガティブな情報があれば、それもすぐに拡散される」という趣旨の話がありました。私は全く逆のイメージを持っていました。東京と大阪では、出版社の数は100倍以上違う。だから、東京から情報を発信してもらう方が早い、という認識でした。一部では合っているわけです。違うのは、ネガティブな情報があればすぐに潰される、という発想です。これは決して間違っていない事でしょう。ただ、「根上」は書籍の表現からいくと「東京はひたすら待たせる」となり、「銀座に志かわ」は「東京から発信する」という戦略を取ったわけです。地方におけるテレビの80%は「東京」の情報です。
「根上」は取り上げてくれるのも、埋もれるのも早い。「銀座に志かわ」は東京から発信する。認識の違いをこの書籍で知りました。どちらが正しいか間違っているかは関係ありません。

いずれにしろ、私はこの「奇跡の食パン(仮称)」を少なくとも10回以上は読みました。
謙虚な気持ちで読みました。一切否定せず、むしろ肯定的に読みました。たとえ私との考えが違ったとしても、そこには必ず「一理」があると思い、5年先輩の「食パン専門店」の坂根社長に対してリスペクトする気持ちで何度も何度も読み返しました。一部では暗記できるところまで読みました。飲食業界の素人である私にとって、この書籍は「マニュアル本」であり、今後の方向を決める「参考書」になりました。
私の部屋は机の後ろに約2000冊以上の本が収めてある本棚があります。しかし、この「奇跡の食パン(仮称)」は私の机の右側にある引き出しの一番上に入れています。時々読み返す為です。

そして、食パン専門店の先輩にあたる坂根社長に、必ずこの書籍にサインをもらおうと思いました。

次回、11月20日に掲載します。

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