代表取締役 湯川 剛

銀座本店は連日お客様が開店前から並んでいただき、テレビをはじめ雑誌などの取材も1週間に数件は申し込みがありました。銀座に志かわの「暖簾」が良かったのでしょうか、店頭での撮影が多くなりました。私はこのような報告を聞く度に、喜ぶよりむしろ不安な気持ちになるのは、心のどこかで「好事魔多し」の人生訓があるからだと思います。
私のこれまでの約50年間の経営の中で、お客様がわざわざ来ていただき、しかも並んで待っていただいている風景は「夢の中」では何度も出てきましたが、現実ではあり得ない50年でありました。それまでの私の仕事は「お客様を探し求めていく」という「開発営業」でした。それだけに心のどこかで「お客様から来てもらえる」という欲求願望が「夢の中」に登場するわけです。それだけに日々の報告の中で「完売御礼」の時間が閉店より前に書かれている、という状況を見ると、喜ぶよりむしろ緊張が走ります。

オープンの季節が良かったのでしょうか、9月のオープンから秋になり、テレビや雑誌では「食欲の秋」として取り上げられるわけです。遠くは千葉や埼玉の首都圏だけでなく、群馬や栃木などの関東圏からもお客様が来ていただきます。中には、関西から私の知り合いであるお客様がキャリーバッグを持って買いに来られました。当初はお一人様2本まで、と販売制限をしていましたので、何度も並ばれて買ったとの報告を聞き、ただただ恐縮していました。

そんなオープンから1か月が過ぎた頃、品川次長からメールが入りました。 彼はOSG本社の総務部次長の管理職でありましたが、私のお願いで銀座に志かわの工房勤務に異動をしてもらっていました。
品川次長からのメールでは「OSG時代と違って早朝の出勤は通勤ラッシュもなく楽です」という内容でした。私はこのメールを見た時「多くのお客様が並んで買っていただいている」ことのありがたさと同時に、早朝から出勤してくれている社員さんやパートさん等の人達の協力なくしてあり得ないのだ、と思いました。それにどう応えなければいけないのか、と真剣に考えました。瞬間的に思い付いたのは「朝5時発信のメールマガジン」のようなものを毎朝送信しよう、と思いました。
内容は前日の成果やメディアで取り上げられたことを掲載し、工房にいる人達に知らせることによって「皆さん方の頑張りがこのようにメディアで取り上げられています」ということが目的です。
同時に、私自身は工房には入らないが同じ時間帯に作業していることで、何か「安心」したい気持ちになりました。そして、本数を知らせる時も「●●本」と書かずに「笑顔の●●本」としました。それは、お客様が銀座に志かわの食パンを買っていただいた時の笑顔や食べていただいている時の「美味しいね」という笑顔からの発想でした。そうです。仮に500本を買っていただいた時、単に「物理的数字」ではなく500人のお客様が笑顔になられた事が数字となって表れてくるのだと思い「笑顔の本数」にしました。

こうして「銀座に志かわ」では、毎朝メールマガジンのような発信が工房の皆さんを中心に全メンバーへ「早朝5時発信」としてスタートされました。
メルマガのタイトルを「熱血版」として、この日から私の毎朝の「熱血版」作成がスタートしました。

【追記】
パン作りなど全く知らなかった品川総務次長は、銀座仁志川設立と同時に工房に異動しました。「素人でも工房が務まる」のモデルケースの為です。2年後に「工房長」、3年後に「統括工房長」となり、2023年6月に「執行役員統括工房長」に就任しました。

次回、12月1日に掲載します。

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