代表取締役 湯川 剛

昨年から掲載している「銀座に志かわ」の話を再開します。

「根上」の創業者が書かれた「奇跡の食パン」の中に、「年越し生食パン」の箇所がありました。これは私達に大きなヒントを与えてくれました。
早速「銀座に志かわ」も「ゆく年くる年食パン」のポスターを作成し予約を取りました。
12月30日に1日1000本の当時のギネスができました。こうして2018年もオープン以来、行列が途絶えることのない「銀座に志かわ・本店」が新年を迎えることになりました。1月3日は通常10時開店のところを11時開店にすることになりました。私は「年が明ければ、この行列が途絶えるのではないだろうか」と髙橋社長と話し合いました。
特に、寒い朝に来ていただいている気持ちもあり、私は髙橋社長に「1月3日のオープンには、年の初めに来ていただけるお客様に福袋のようなものを準備できないでしょうか」と相談しました。髙橋社長は「食パン専門店で福袋を出すのは、業界初の出来事です」との事で、「業界初ならやりましょう」と即決しました。問題は福袋に何を入れるか、という事になりました。
「銀座に志かわ」の工房にはベテランパン職人の経歴を持っている工房スタッフが多数いました。おそらく、同業他社の「食パン専門店」との大きな違いであり、私達の強みでもありました。髙橋社長から「お正月らしく3品目のあんぱんを用意しましょう」という事になりました。

年が明けて、2019年1月3日11時に本店が開店となります。
私は8時過ぎに電車に乗りました。そわそわしながら銀座本店に向かいました。電車に乗りながら、「昨年通り並んでいただいているだろうか」「年末に1000本を超える食パンが売れたので、今日は無理ではないだろうか」「福袋だけでお客様は来られるのだろうか」と私らしくない不安材料が頭をよぎりました。
地下鉄宝町駅から降りて、いつもの道を歩きました。時刻は9時前です。開店まであと2時間あります。駅から昭和通りを歩き、左に曲がります。勿論、ここから「銀座本店」は見えません。信号を渡って50メートル程歩くと「銀座本店」が見えてきます。そこを右に曲がった時に「えっ!」と驚きました。まだ開店まで2時間近くあるにも関わらず、お客様が並んでいただいています。大きな門松が銀座本店の両脇に立ててあります。
私は並んでいただいているお客様の横を頭を下げながら通って、事務所に上がりました。
「明けましておめでとうございます」の新年の挨拶も忘れ、「お客様が並んでいるけど」と言ったところ「朝5時から並んでいます」と工房長らからの回答が返ってきました。
私は「朝5時?!」と驚きました。従来の1番のお客様より更に早く並んでいただいている、という事になります。。お目当ては「福袋・銀座に志かわのお正月あんぱん3品目」です。
私はこれを知り、ありがたいという気持ちより、お客様に申し訳ない事をしたのかな、という気持ちになりました。
ネクスト・ワンの宮崎社長は、私より早く本店に着き、並んでいただいているお客様を見て驚き、近くのコンビニで温かいコーヒーを配ったところ次から次へとお客様が来られ、その間本店とコンビニを往復して温かいコーヒーを配っていたとの話でした。私は、宮崎社長に「お客様には平等に対応しなければいけないので、コーヒーを配るなら全員のお客様にしなければならない」と少し注意をしましたが、宮崎社長もそれほどお客様に対して「朝早くから並んでいただいている驚き」と「申し訳ありませんという感謝の気持ち」がそうさせたのだと思います。

こうして2019年もお客様の行列で「銀座に志かわ・本店」は新しい年を迎えました。

【追記】
「福袋」は2019年に1度やったきりで、それ以降は発売していません。
その理由は朝5時に並んでいただいた、という事が大きく影響しています。
あの時に寒い中で並んでいただいたお客様には、心からお礼申し上げます。
そして、寒い中で温かいコーヒーをお配りしましたが、途中から配ることを中止したことによって受け取ることができなかったお客様には、心から申し訳なく思います。

次回、2月1日に掲載します。

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