代表取締役 湯川 剛

コロナ禍の中で、4月7日「銀座に志かわ盛岡店」が59番目の店舗としてオープンしました。前日に伊丹空港から花巻空港へ移動。リムジンバスで盛岡市内に入った時はすっかり夜になっていました。この時点で、岩手県は全国唯一の「感染者ゼロ」でした。
当時は、都道府県ごとに日々テレビや新聞で感染者数が発表されていました。
感染者が出ている都道府県での新しい店舗の開店準備においては、オープン時の行列を想定して必ず人と人との距離を空けるようにしていました。ところが、岩手県は「感染者ゼロ」。そのため当日のオープンは、従来のようにお客様同士の距離を空けず並んでいただきました。祝い花もあふれんばかりに並んでいます。テレビ取材も数局入りました。
当時の言葉で「ソーシャルディスタンス」と呼んでいましたが、私はお客様同士が距離を空けず並んでいる風景を見て「これが普通なんだ」と妙な感激を受けました。この感激が私を動かします。

この日、史上初の「緊急事態宣言」が発出されました。
「2020年4月7日、安倍首相は埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、大阪府、兵庫県、福岡県に初めての緊急事態宣言を発出しました。」とネットニュースで流れました。

私が決断しなければならない課題がありました。
4月7日8時。
「銀座に志かわ盛岡店」オープン2時間前です。
私は溝端社長に電話をし「1万ケースの除菌水を無償提供する」と自分の決断を伝えました。そして「まずは東京都と大阪府に無償提供しよう」と伝えました。これをやるには莫大な費用が掛かります。それをどこから捻出するのかをも含めて、話し合っていました。しかし、答えが出ないまま「銀座に志かわ盛岡店」のオープン時間を迎えました。オープンセレモニーは髙橋社長が中心として行います。私は記念写真を撮り、オープンを見届けた後にその場から離れます。ほとんどのオープンセレモニーはそのようにしてきました。
「銀座に志かわ盛岡店」オープン時の心境は今も覚えています。オープン前の慌ただしさの一方で除菌水の無償提供をするのか否か。また、どのエリアからするのか等、交差しながらオープン時間を迎え、タクシーが迎えに来た場面まで鮮明に覚えています。

私は、盛岡発10時50分の新幹線に乗りました。
「まずは除菌水の無償提供を決断した」「ただ、莫大なコストが掛かるので、1番ひどい東京都と大阪府からやろう」「いや、残りの県はどうするのか」等と新幹線に乗りながら、頭の中はその事でいっぱいでした。その時、ふと数時間前の「銀座に志かわ盛岡店」でのオープンの場面を思い出しました。「ソーシャルディスタンス」もなく、お客様が自由に並んでおられるあの場面です。このような「コロナ前の風景」を1日も早く取り戻したい、との気持ちが急に湧き出てきました。私の手帳に「感染者ゼロの盛岡から、感染者多発の東京に向かって自分はいる」と書いてあります。そして「よし、7都府県1万ケースの無償提供をやろう」と決断しました。その時、新幹線は仙台を通過しました。

次回、12月1日に掲載します。

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