代表取締役 湯川 剛

4月7日13時45分。
私は新幹線で東京駅に着き、東京本部に駆け付けました。新幹線内で連絡をしていましたが、OSGグループ部署責任者会議をオンラインで行いました。
「活動制限の中で業務を可能な限り行う」「緊急事態宣言7都府県の対象エリアのみに除菌水の無償提供を行い、対象外エリアは頑張ってほしい」と指示しました。

17時。OSGグループ全社員向けに「緊急事態宣言とOSGグループの対応」を発信しました。「7都府県に除菌水の無償提供を決断した事を発信したが、経営者として間違っていないかと悩んだ」とその日の日記に書いてあります。
1万ケース無償提供による損失。それに「日本、元気に!」のCMでの多額な費用。新年度開始からわずか2か月で大きな損失を背負ってのスタートでした。「1万ケースと創立50周年記念式典の断念において、全ては『腹を括る決断だ』」とも日記に書いてあります。

悩んでいるのか、日記には色々な文章が書いてあります。
「反転攻勢」「コロナショック後のV字回復フェーズ」「信じよう、自分の決断を」「これが創立50周年の運命だ」と今それを読み返すと、いかに迷っていたのかが手に取るように分かります。久し振りの迷いです。当時、やる事が善意であると分かっていても、経営者として数字の責任等「これが正しい」という自信はなかったのでしょう。勿論、今でもその自信はありません。

4月8日0時をもって、史上初の「緊急事態宣言」が5月6日まで発出されました。この期間「外出自粛」(不要不急の外出はしない)として、OSGの出勤方法を変えましたが、経営者としてこの判断は正しいのか間違っているのか、迷いながら朝が明けました。
このような日々が数日間続きました。まともに寝る事はありません。はっきり言って不眠が続いていました。その原因は、私の決断が「会社として」正しいのかという迷いです。不眠の原因は「迷う私」「悩む私」です。更にその根本原因は、誰もが経験した事のないことによる「先が見えない」「答えが見えない」という事です。

4月9日。読売新聞がOSGに関する記事を掲載しました。しかし、どのような記事であったのかはあまり覚えていません。翌日、知人の毎日新聞記者がたまたま訪ねてきました。私は「創立50周年記念式典を犠牲にして除菌水の1万ケース無償提供を行う事に対して、社員さんの気持ちを何か形にできないものか」と相談しました。その時に、政府や知事も頑張っている事に自分達も参戦したい、「企業市民」の一員として総力戦に参戦したい、と話した事を覚えています。

昼過ぎ。総務部長に電話をし「OSGの社員さん及び家族の皆さんにコロナ感染者はいないか」と確認したところ「誰もいません」との回答にホッとした事が、当時の私の心の安らぎでした。

おかしな話です。

次回、12月10日に掲載します。

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