代表取締役 湯川 剛

「市場とは存在するものではなく 創るものである」
私の37年間の経営人生において、この言葉は欠かす事の出来ない言葉です。
特別な技術や資格持っていない私にとって、今までにない製品を扱ったり、従来にない売り方をしなければ生き残る事は困難な状況にありました。誰かが作った後を付いて行った瞬間、突き落とされるのがオチでした。ですから、誰かがウマくいったので話に乗る人がいますが、そんないわゆる「二匹目のどじょう」とか「二番煎じ」といった発想は、私から見れば到底、考えられない事でした。
「私の目の前に『市場』はない。だから、自ら創るんだ。」
これは、それまでの経験の中から体得した事と言えるでしょう。

低周波治療器も同じです。肩こりや腰痛に悩む顧客は確実に存在するのですから、間違いなく市場はあるのですが、私にとっての「既存市場」がないのです。「訪問販売などで顧客を探す方法が手っ取り早い」と考えがちですが、訪問販売という方法を採らない私にとって、やはり「市場」は自らで創らなくてはなりません。つまり「市場開拓」です。

「市場開拓」を行なうにあたり、私は「需要顧客層」について考えてみました。
例えば、考える切り口として、「肩こりや腰痛の原因はなんだろう」という具合にです。
そうすると「肩こりの要因」という切り口で考えてみると、従来多かった筈の「肉体疲労によるもの」より、「神経性」や「ストレス」が起因している肩こり・腰痛が増えている事に辿り着きました。なんとなく顧客のターゲットが見えてきます。そこでストレスを感じる職業を徹底的に洗い出し、それらと「今、自分に与えられている環境」を照らし合わせてみると、ひとつの「顧客市場」が現れました。それは「運転手市場」です。更にその側面として、交通事故の要因を調べてみると、運転技術の未熟さによる事故より、殆どが運転手のちょっとしたミスによる事故が上位を占めていました。ちょっとしたミスとは、疲れから派生するものです。そこで私は低周波治療器の長い販売歴史にはない考えを思いつきました。全ての顧客ターゲットを運転手市場に絞り込んだのです。運転手市場の中にはGS、つまり「ガソリンスタンド」が含まれています。それこそが、私に与えられた環境、市場だと判断した訳です。

GSの社員教育の一環として「低周波治療器」の販売を付加する事を思いつきました。これが成功すれば、私の会社にとって大きな成果となるだけでなく、GS側にとっても今までにない新規市場が拓ける事になると考えたのです。但し、あくまでも私の頭の中にあるプランであって、当然成功する約束の保証はありません。
そこでGAT訓練の問い合わせに来たGS会社に、思い切ってこう言い放ちました。
「私共の訓練が貴社の販売能力を高める為に、実践教育も受けて欲しい。それは貴社がかつて扱った事のない製品も販売して貰います。更に実践教育終了後、最後に貴社の取扱製品の販売も行ないます。目標に失敗をすれば、訓練費用は一切要りません。」

これに対して相手は「教育をして貰い、油外収益が増え、同時に自社取扱製品の収益が増え、目標が未達なら教育費が返還されるなら、断る理由は何もない。是非お願いします。」との返事に私は内心、武者震いしてその実践教育実施に踏み切りました。
さて、成功するか、それとも大失敗の大恥をかくか。まさにターニングポイントでした。

(次回に続く)

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