いつもニコニコと私を弟のように可愛がってくれた西山社長の突然の訃報。
52歳という亡くなってしまうには早すぎる命。そしてそんな西山社長の命と入れ代わるように誕生した「リスムタッチ」。私の胸にはいろいろなものがこみ上げてきました。
それは母親を亡くした27歳の秋頃の話です。カートリッジの交換業務で藤井寺市のあるお客様宅を訪問した時の事。四柱推命の占いをされているというお宅でした。「占ってあげよう」という話になって、私は正直あまり乗り気ではなかったのですが占って頂く事になりました。
占いの結果は、「君は若くして死ぬよ。だけど大きな財産を得るよ」というものでした。まさかカートリッジ交換に来ている私を経営者だとは知らないお客様は、こう続けました。
「人間はどうせ死ぬんだよ。それよりも大きな財産を得られる星に生まれているのだから、勤めていないで早く独立しなさい。その方がいいよ」と、お客様は笑顔で私に言いました。
母が亡くなったこの年は、第41回目の「25回の遺書」でも述べましたが、母の他にも友人が亡くなり、かなり死というものに対してナーバスになっていた時期でした。
私は「占い」というものを頭から否定するような事はしませんが、だからと言ってそのまま真に受ける事もしません。若くして死ぬって、いったい何歳なのか。それについては明確に言って貰えなかったのですが、それ故に心のどこかに引っ掛かっていました。遺書を書き始めたのには、そんな事が多少影響していたかも知れません。その後、3度ほど同じような事を言われ、いつも「それはいったい何歳?」と思いながら、答えが明確に示される事はありませんでしたが、4人目に出会った占い師はズバリ「36歳」と言い切りました。それ以降、今日までこのような「占い」とは一切接触していません。
でもこの占い結果は、日々の忙しさの中ですっかりと忘れていました。しかし西山社長の52歳の若さでの死に直面し、改めて私の中に「36歳まで」という命の期限が急に蘇ってきました。勿論、占いの結果に反発もありました。その36歳を迎える年に「リズムタッチ」というオリジナル商品を誕生させる事に、異常な程に燃えていました。
「何としても日本一になるのだ」と西山社長の49日を終えて、1983年1月25日、すなわち36歳と10日目に「リスムタッチDX」を発売。京都・神戸営業所を設立しました。
この1月の中旬から幹部社員宅を連日業務終了後に訪問し、奥さんに「1985年に業界日本一になる」という約束をしました。「その為にこの3年間はご主人を私に預けて欲しい」とお願いに回ったものです。
(次回に続く)
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