代表取締役 湯川 剛

日曜日の夜9時にTBS系で、確かホンダの提供だったと記憶していますが、「素晴らしき仲間たち」という番組がありました。新大阪のホームで猪木さんと出会ってから1週間は経っていなかったかと思います。その番組にはピアニストの山下洋輔さん、直木賞作家の村松友視と共に猪木さんが出演していました。

人間は意識しているか、していないかによって、情報の受信装置の感度は違ってくるようです。例えば、近々引越しを予定している人の目や耳には引越会社のチラシやテレビのCMに目が止まったり情報が飛び込んできたりするでしょうが、同じようにテレビCMに接していても引越しに無縁な人の意識には留まらないものです。恐らくそれと同じ現象でしょう。この数週間の私は「アントニオ猪木」という名前に反応するよう受信装置のチャンネルが設定されていたかのようでした。そうでなければ、この「素晴らしき仲間たち」という番組も見る事はなかったかと思います。しかし、そんなあまりにタイミングの良い偶然の出来事は、「これは神様の仕業だ。この出会いは必然的な出会いだ」と私に思い込ませるには十分なものでした。
私はその猪木さんが出演する「素晴らしき仲間たち」を食い入るように見ていました。猪木さんが発する一言一言に納得していました。人間は不思議なもので好意的にみると全てが「善」と見えてしまうのでしょう。たぶんカリスマ教祖のイカサマ宗教の信仰もこんな作用が働いているのかもしれません(笑)

今から考えればどうって事のない猪木さんの話も、当時の私にとっては大変好意的でした。
「壮大な話をするなぁ」「スケールがおおきいなぁ」が「日本一に相応しいなぁ」となり、私は何かに取り付かれたように、何と「猪木さんに手紙を書こう!」と思うまでに至りました。
何せ「神様からの引き合わせだ」なんて思っているから、これ程強いものはありません。
しかも前しか見ない36歳の年齢がそう行動させたのでしょう。
広告代理店が何と言おうと、広告代理店の声より神様の声の方が大きい!
そして私は生まれて初めて、ファンレターを書くのでした。

「自分は今、小さな会社を経営している。36歳である。日本一を目指している。CMに日本一に相応しい出演者を起用したい。先日、新大阪で出会った。今日、テレビの番組を見た。そして・・・」

(次回に続く)

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