代表取締役 湯川 剛

私は会社を設立してからというもの、頭の中は仕事の事でいっぱい。逆に言えば、それ以外の事は殆ど興味を持たず、受け付けない。だからロス五輪が開催された当時であっても、私にとって「オリンピック」に興味を抱く事はありませんでした。
ロス五輪の閉会式で「4年後の開催地はソウル」だと知り、「次は韓国だ!」と思いました。
勿論、オリンピック開催ではなく、仕事での話です。オリンピック開催で韓国は必ずスポーツ熱が高くなる。こんな時こそ「スポーツの後にリズムタッチだ!」と。

私はそれまで韓国に一度も行った経験がなく、勿論、韓国に知人友人もありません。そこで私は電話帳を開き、「日韓○○協会」などと明記される幾つかの団体に片っ端から電話をしました。その中で非常に興味を持ってくれた団体があり、日本側の窓口に相談をしたところ、日本語の出来る会長が韓国にいるとの事。その会長の企業は、高麗人参を扱っている会社でした。

その協会を通じて、リズムタッチを取り扱ってくれる韓国側の企業を探して貰う手筈になっていたのですが、リズムタッチに関心を示されたこの協会の会長が、「自分の会社で扱いたい」と言ってくれました。そんなに苦労もせず、とんとん拍子に事が運んでいいのかと思いましたが、韓国市場参入は1日でも早い方が良いと決断しました。しかし結果的には、金銭的トラブルが発生し上手くいきませんでした。

そんな中「韓国でもリズムタッチと同じような商品を扱っている会社がある」との情報があり、その会社の製品カタログを見せてもらいました。見て驚きました。なんとOSGの製品カタログと全く同じイラストを使っているではありませんか。会社はT医療器商社でした。

私は早速、T医療器商社を訊ねて文句の一つも言ってやろうと思いました。ソウル市の中心街、日本でもよく知られているエリアに、T社の自社ビルはありました。事前の調査ではR社長はオーナーで、韓国の低周波治療器のトップ企業で、多くのセールスマンを率いていました。
私が訪問した事に、R社長は驚いた様子でした。非常に人懐っこい社長の人柄から、私は文句を言う事もかなりトーンダウンしました。彼は私に「私は製品コピーの名人です。もし日本の新製品が今月出来たら、必ず3ヵ月後にはそのコピー商品が韓国市場にあります。」と、悪びれる事もなく説明していました。そして「でも、OSGさんの商品は絶対にコピーしません。安心して下さい。」というので、私は更に驚きました。

その後に食事に行く事になり、焼酎の杯を交わすうちに、「私は湯川社長が気に入りました。是非、韓国市場でOSGの製品を売らせて欲しい」とR社長は言い出しました。その後、彼は誓約通り、他の日本製品の模造品を製作・販売しても、OSG製品に対しては一切、そのような事はなく、むしろリズムタッチを1000台単位で輸入してくれる程の関係になりました。
残念ながら、このT社は1997年に起こったアジア通貨危機の煽りを受けて倒産しましたが、このR社長との出会いから色々な韓国の方々との人脈が生まれ、現在のOSG韓国市場の参入に大きな影響を与えています。

1984年も慌しく終わり、いよいよ「業界日本一」実現をする1985年を迎える事となりました。

(次回に続く)

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