代表取締役 湯川 剛

上海市内でも有名なショッピングモール「上海興業太古滙店」までオープンが3か月を切っているにも関わらず、まだメニューが手付かずである事に驚きました。この時ほど、私自身がレストラン経験者でない事に苛立ちと焦りを感じた事はありません。もし私が経験者であるなら、具体的なアドバイスをした事でしょう。また、ネットワークなどを使い、意見を求めたと思います。しかし私にはそれが出来ません。しかも、ここは日本ではなく中国です。メニューだけではありません。容器等もどのような物を採用するかすら意見が言えません。そんな状況の中、5月30日にホテル近くの上海市民が利用する大衆食堂で食事をしました。2人の中国OSG社員ももちろん飲食関係の経歴も経験もありません。
私は、2人を相手に「メニューはどうすればいいのか」「容器はどのような物を使えばいいのか」と回答を求める事もなく、単に話し相手に食事をしていました。

その時私は、ふとある人物を思い出しました。「さぼてんの楽さんはどうしているのかな」と言い、すぐその場でスマートフォンから彼に電話をしました。とはいえ何年も連絡していません。私を知ってくれているかすら自信がありません。幸運にも電話は繋がり、楽さんは私の事を覚えていました。私が知る数少ない飲食業界の中国人の知人です。聞くところによると、近くにある彼の店にいるとの事です。私は「すぐそちらに行く」と面談の依頼をしました。20時過ぎに虹橋にある上海さぼてんに到着しました。
彼は、日本にもあるトンカツ専門店さぼてんの中国さぼてんの総経理です。流暢な日本語と中国人には珍しい日本の経営を熟知している総経理です。20時30分には閉店します。彼は、スタッフと共に後片付けをしていました。その姿に私は感動しました。閉店時間ぎりぎりに時間を作ってくれました。そこで、全ての状況を説明しました。アドバイスも求めました。彼は「よく分かりました。私が出来る事は協力しましょう」という言葉を受け取り、次回の面談を約束しました。ホテルに帰る道すがら、「助けてくれる人が1人現れた」と感じ、翌日の台北への移動は少し安堵した気持ちで飛びました。

今回の訪台スケジュールには、第2号店候補の話や「信貴山千手院」の台湾進出についての行事がありました。
実は、1980年から40年以上毎月初めに、社員及び家族の皆さま・関係者の皆さまへの健康と幸せを祈願するために「信貴山千手院」(奈良県)に参拝します。
2023年秋。信貴山千手院の田中管長猊下から「台湾別院を設立したい」との相談を受けました。理由は、在日台湾人経営者の方々が信貴山に参拝されていましたが、コロナ禍で帰国された方々が多くいる。それならば、台湾でも毘沙門天様を礼拝できる場所を提供したい、という説明を聞きました。私は、その時点では信貴山千手院台湾別院の設立について、賛否を判断するだけの材料がありませんでした。しかし、80歳の管長のその発想に感動しました。その時、私が管長に「私が出来る事はお手伝いします」と答えた事からこの話がスタートします。

ここから少し不思議な話をします。翌年の2024年春。
既に千手院では「台湾別院設立」に関して関係者の方々が動かれていました。それとは別に「台北で銀座仁志川を進出しないか」との話があり、その為に私は訪台します。台北ホテルオークラのカフェで「銀座仁志川・台北店」のお客様と会った翌日に、同じホテルオークラで、元台湾JAL社長の多田氏と福田氏が初めて面談しました。このお二人が既に千手院・台湾別院設立で動いているとの事でした。即ち、私が田中管長に「私が出来る事はお手伝いします」と申し出をしましたが、その為にわざわざ訪台する事はなく、「銀座仁志川台湾」設立のための訪台へと話は進んでいきます。
2024年の春から約1年後の春。その間、色々な経緯はありましたが、2025年6月2日、信貴山千手院は台中にある九天玄女寺院との交流が始まり、この日法要が営まれました。千手院総代である高市衆議院議員からの祝花も届きました。鄭台中副市長や台湾総統府国策顧問も参列されました。「想いは実現する」を間近に見ました。
また、前日の6月1日には、台北市内にある国立劇場で九天玄女寺院を支える九天民俗技藝団のステージを観劇しました。内容は、台湾で実際に起こった津波による水害で今も海底に沈んでいる行方不明者の鎮魂のステージです。私自身、大変感銘を受けました。

私は、翌日台北から香港に移動しました。雨と風の影響で乱気流に揺れるC1―909便。大揺れの機内の中で「なんか命を懸けているな」という気持ちになりました。
出発するこの日の朝に「生涯セールスマン・食パンを国境超えて持って行く」をLINEしましたので、余計にそのような気持ちになりました。香港では、投資家の「トリプル劉」と日本から来た「嵜本ベーカリー」部長と合流。物件等を見学しました。

上海から台北、そして香港へ。7泊8日の出張は終わりました。創立55周年記念式典まであと3か月を切っていました。


次回、7月29日に掲載します。

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