第89回  詩集「馬鹿のひとり旅」に挑むか

明日の2月20日。生きていたならば、猪木の81回目の誕生日です。
生前、猪木が生きる希望として「猪木さんの映画ができる」と伝えました。映画のタイトル「アントニオ猪木をさがして」を伝えて、本人も満足げでした。
もう1つ生きる希望として、猪木と話した事があります。それは、詩集「馬鹿になれ」の続編でした。ここでもう1度、その当時の「人生はプラス思考で歩きましょう!」第529回:詩集「バカのひとり旅」(2022年12月5日掲載)を掲載します。

『 ~(略)~ 実は私は前々から考えていた事を伝えようとしましたが、話の流れからこの日が絶妙なタイミングだなと思い伝えました。それは詩集についてです。
「猪木さんに、考えて貰いたい事がある」と言って、以前猪木の著書である詩集「馬鹿になれ」の続編を作ってほしいと言いました。病床の猪木は以前のように表情はあまり出しません。黙って聞いているか、少し笑顔を出すかだけです。この時は黙って聞いていました。
更に私は猪木に対して「猪木さん、ベッドの中はいつも暇で退屈でしょう。だから考えてほしいのです」に猪木は少し笑いました。まんざらでもない感じです。
そこで詩集「馬鹿になれ 第2弾」や詩集「続 馬鹿になれ」では芸がないのでタイトルを考えてほしいと言いました。先ほどの「ふたりのイノキ」の話の続きでしたので、話はスムーズです。猪木は私の「タイトルを考えてほしい」と言った後、目をつぶりました。私は猪木が考えているのかなと思い待っていましたが、それから数分間はそのままの状態でした。
「あれ、寝たのかな」と思い、もし眠ってしまっているのなら、そのままそっと部屋を出て帰るつもりで「猪木さん、寝ているのですか」と小声で言いました。
猪木は目をつぶりながら「考えている」と小さな声でいいました。ややこしい表情です。
私は、今でなくてもいいので考えて下さいといい、帰る間際にも「とにかく暇で退屈なんだから」というと、猪木は目をつぶってニヤッと笑っていました。笑顔にホッとします。

翌日、猪木宅に行きました。いつものテーブルに車いすの猪木がいました。
この時は2人の会話は既に「ネタ」が出来ている訳で話はスムーズです。私は会うなり「考えてくれましたか」の質問に猪木は無言でした。私は前回の詩集「馬鹿になれ」の「馬鹿」は外したくないですと言い、会話を続ける事に心掛けました。少し時間が経ったでしょうか。
猪木は小さな声で何か言いましたが、聞き取れません。猪木は必死に何かを言っています。
「えっ!」と少し私の耳を猪木に向けました。聞き取れない小さな声でいいました。
「馬・鹿・の・ひ・と・り・旅」
私は「馬鹿のひとり旅?」と言葉を確認しました。
そしてもう一度「馬鹿のひとり旅」と確認した後すぐに「いいですね」と言いました。~(略)~ 』

この「馬鹿のひとり旅」が未完のままで終わりました。何とか完成したいものです。
それにしても、この時のやり取りが目に浮かびます。猪木さん、寂しいです。

次回、2月22日に掲載予定です。
(「天国の猪木へ」は不定期掲載です)

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